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クレカ投信積立の上限「月10万円」に 各社の対応は?

山口健太ITジャーナリスト
月10万円の投信積立が可能に(楽天証券のWebサイトより、筆者撮影)

3月8日、ネット証券各社がクレジットカード決済による投信積立の上限を「月10万円」に引き上げることを発表しました。

恩恵を受けるのは「月5万円では足りない」一部の人に限られるものの、ポイント還元では各社の判断が分かれており、NISA口座を選ぶ基準の1つになりそうです。

各社が10万円化に対応、ポイント還元率は判断分かれる

クレジットカード決済による投信積立は、一度設定しておけば残高を気にすることなく毎月自動的に積み立てができる便利な仕組みです。

銀行口座と連携した引き落としに対応している証券会社もありますが、クレジットカードならポイント還元を得られることもあり、人気を博しています。

この上限金額は「金融商品取引業等に関する内閣府令」で以前から月10万円となっていたものの、さまざまなケースを考慮して上限を月5万円とすることで、法令上の上限を超えることがないよう各社は横並びとなっていました。

2023年までのつみたてNISAの枠は年40万円(月3万3333円)となっており、十分だったものの、2024年から始まった新NISAのつみたて投資枠は年間120万円(月10万円)になったことで、上限の引き上げが議論されていました。

tsumiki証券のように、独自の工夫で月10万円化を実現したところはあったものの、今回の内閣府令の改正により、どの証券会社でも月10万円までのクレカ投信積立を提供しやすくなったといえそうです。

3月8日にはネット証券各社が上限10万円への引き上げを発表しています。各社の注目ポイントを見ていきましょう。

■SBI証券

https://www.sbigroup.co.jp/news/pr/2024/0308_14475.html

積み立てに利用できるクレジットカードはすべて10万円への上限引き上げの対象になるとのこと。3月22日にポイント還元率の詳細を発表し、2024年11月買い付け分からはクレジットカードの利用額に応じて変動する仕組みになるとしています。

■楽天証券

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/company/newsrelease/pdf/press20240308_02.pdf

楽天カードによる投信積立について、4月分から月10万円に対応することを発表。なおシステム対応のため、設定できるのは3月10日の朝からとなっています。

ポイント還元率については決算説明会で予告があった通り、積み立て額に対して最大1%のポイントがつく仕組みを維持しています。

さらに楽天キャッシュを併用することで、合計15万円までキャッシュレスで投信積立ができるとしています。なお、現時点で楽天キャッシュの上限は5万円のまま変更はないとのことです。

■auカブコム証券

https://kabu.com/company/pressrelease/20240308_1.html

au PAYカードによる投信積立について、3月15日から上限を10万円とすることを発表。ポイント還元は1%のままで、毎月10万円を積み立てた場合1年間で12000ポイントがたまるとしています。

なお、auのスマホ料金と一体化した「auマネ活プラン」のクレカ積立特典については、5万円までが上限となっています。月10万円の積み立てをしても特典をフルに得られることはできないようです。

■マネックス証券

https://info.monex.co.jp/news/2024/20240307_02.html

マネックスカードによる投信積立について、3月25日(予定)から上限を10万円とすることを発表しました。

なお、ポイント還元率は5万円以下では「1.1%」と他社より高いものの、5万円超~7万円以下は0.6%、7万円超~10万円以下は0.2%に下がるとのこと。10万円の積み立てに対して付与されるのは730ポイントとしています。

■PayPay証券(3月13日追記)

https://about.paypay.ne.jp/pr/20240313/01/

PayPayカードによる「PayPayクレジット」を利用した投信積立について、3月24日午前5時から上限を10万円に拡大すると発表しました。

クレジットつみたてのポイント還元率は0.7%でしたが、対象は月5万円までとなっています。そのため、獲得できるポイントの上限が毎月350ポイントである点は変わらないようです。

NISA口座選びの基準になるか

毎月の上限が10万円に引き上げられたとはいえ、実際に恩恵を受ける人はどれくらいいるのでしょうか。

NISA口座数で国内トップの楽天証券の場合、つみたて投資枠の設定額は平均約4万円となっており、月に5万円超の積み立てをしている人は20%にとどまっています。

楽天証券利用者の平均積み立て設定額(楽天証券提供資料より)
楽天証券利用者の平均積み立て設定額(楽天証券提供資料より)

80%の人は5万円以下であることから、現時点で恩恵を受ける人は少ないといえます。ただ、将来的に積み立て額を増やしていきたい人にとっては、ポイント還元率の違いが気になるかもしれません。

これからNISA口座の開設を検討する場合、上限の10万円までしっかりポイントが付与されるかどうかは選択基準の1つになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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