業界初のカード投信積立「月10万円」 どう実現したのか
丸井グループのtsumiki証券が、エポスカードによる投信積立の上限を2024年から「月10万円」に引き上げることを発表しました。
業界各社が「月5万円」で横並びとなっている中、tsumiki証券によれば業界初の取り組みといいます。どうやって実現したのか、また他社の追従はあり得るのか、考えてみます。
業界初のカード投信積立「月10万円」が実現
投信積立は口座引き落としでも可能ですが、特に人気が高まっているのがポイント還元のあるクレジットカード決済です。
カード投信積立の上限額は、内閣府令では「月10万円」になっているものの、各社の上限はその半分の「月5万円」で横並びとなっていました。
その理由としては、投信積立をカード決済してから、その利用代金が実際に引き落とされるまでのサイクルが関係しているようです。
このサイクルによっては、引き落とし日の前に翌月の積み立てが発生する場合があることから、どのような場合でも「月10万円」を超えないよう、その半分を上限にしているわけです。
それではtsumiki証券の場合、この制限をどう回避したのでしょうか。公式な回答としては、「社外秘のため詳しくお伝え出来ませんが、当局(関東財務局)と弁護士の確認を取りながらクリアいたしました」(tsumiki証券)としています。
ただ、tsumiki証券の利用明細を見ていくと、その秘密が浮かび上がってきます。筆者のエポスカードでは、9月分の積み立ては「9月1日」、引き落とし日は「9月27日」となっていました。
このことから、tsumiki証券は与信枠の確保から引き落としまでを1か月以内に収めることで、月10万円を超えない仕組みを確立できたのではないかと筆者は考えています。
ちなみに他社の場合、あるカードでは積み立てが「8月16日」、引き落とし日が「9月27日」となっていました。この仕組みでは、おそらく9月16日に翌月分の積み立てが発生するため、月5万円を上限にせざるを得ないでしょう。
もしtsumiki証券に対抗するのであれば、積み立てから引き落としまでがどのような場合でも1か月以内に収まるよう、システムを改修する必要があると考えられます。
なお、投信積立に対する「がんばってるね!ポイント」、またプラチナ・ゴールドカードのボーナスポイントにかかわる年間利用額にカウントされるかどうかは、「現在検討中」(tsumiki証券)としています。
ポイントの扱いは気になるところですが、新NISAでは独自の強みになりそうです。つみたてNISAの枠は年40万円から年120万円に増えることから、「月間10万円×12カ月でこの制度をフル活用していただけます」(tsumiki証券)といいます。
新NISAに向けては、楽天証券も「合計で月10万円」を強みとしてきました。その内訳は楽天カードで5万円、楽天カードからチャージするとポイント付与がある楽天キャッシュで5万円というものです。
これに対してtsumiki証券とエポスカードは、より分かりやすい形で「月10万円」を実現してきたといえます。
果たしてどれくらいの人に恩恵があるのでしょうか。tsumiki証券のnoteによれば、顧客1人あたりの平均積立額は「月2万7000円ほど」、最も多い金額層は「月100円~1万円」が全体の37.1%を占めているとのことです。
このことから、実際に月5万円を超える額を積み立てる人が急増するとは考えにくいものの、「月10万円」に魅力を感じる人がtsumiki証券に集まってくれば、話は変わってきそうです。
上限見直しにも期待
カード投信積立にも適用される内閣府令の「月10万円」という制限は、投資家保護のためと考えられるものの、本当に意味があるのか筆者は疑問に感じています。
楽天証券は電子マネーを介することで、実質的に楽天カードで月10万円の投信積立を可能にしています。
また、複数の証券会社を利用している人であれば、それぞれに対応したカードを作り、合計で月に10万円を超える投資信託を買い付けることは容易に可能です。
新NISAにあわせて、どの証券会社を使っている人でも月10万円のカード投信積立が可能になるよう、上限を緩和してほしいところです。