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国民年金の保険料 今年もアプリやクレカで「前納」がおトク

山口健太ITジャーナリスト
国民年金保険料の「前納」を考える(筆者撮影)

自営業者など国民年金の保険料を自分で支払う人に向けたサービスとして、2023年にはスマホ決済に対応するなど利便性が向上しています。

また、2024年度に続いて2025年度も保険料の引き上げが決まっています。ポイント還元を得るなど、少しでもおトクに支払うことへの関心が高まりそうです。

楽天ペイやLINE Payにも対応

厚生労働省は、1月19日に2025年度(令和7年度)までの国民年金保険料前納額を発表しました。

前納は保険料を前払いすることで安くなる制度です。2024年度と2025年度の2年分を納付書を利用して支払うと39万8590円となり、毎月納付するよりも1万5290円おトクになります。

金額的には大きな負担になるものの、単純計算では2年前納で3.7%安くなります。日本円を運用してこの利回りを得るにはある程度リスクを取る必要があることを考えれば、利用する価値は十分にあるという印象を受けます。

金額は2種類に分かれており、額面上は「口座振替」のほうが2年前納の場合1300円安く、スマホ決済やクレジットカード決済を含む「現金納付」はやや割高です。しかしポイント還元を期待できる場合、たとえば1%還元なら約4000ポイントが得られるのでおトクというわけです。

キャッシュレス決済は、これまでのクレカに加えて2023年からスマホ決済にも対応し、2月20日の開始時点では「au PAY」「d払い」「PayB」「PayPay」の4種類、4月17日から「楽天ペイ」、11月1日から「LINE Pay」を利用できるようになっています。

ただし、スマホ決済では上限金額が30万円となっており、支払い額が30万円を超える2年前納には対応できないことが制限事項となっています。

一方、クレカなら2年前納を利用できます。デビットカードにも対応しており、筆者は2022年に「Revolut」を利用して2年前納をすることができました。

Revolutを利用した2年前納の例。金額は付加保険料を含む(アプリ画面より、筆者作成)
Revolutを利用した2年前納の例。金額は付加保険料を含む(アプリ画面より、筆者作成)

クレカ払いの注意点として、国民年金の保険料支払いのポイント還元率を下げたり、ポイント還元の対象外としたりするカードがあることから、最新情報を確認することをおすすめします。

おトクなカードの例として、「エポスゴールドカード」では、ポイント還元率が3倍(合計1.5%還元)になるショップを3つまで選べる仕組みがあり、国民年金も対象に含まれていることから人気があるようです。

エポスゴールドカードなら合計1.5%還元の対象ショップに選べる(写真はJQ CARD エポスゴールド、筆者撮影)
エポスゴールドカードなら合計1.5%還元の対象ショップに選べる(写真はJQ CARD エポスゴールド、筆者撮影)

一方、楽天カードでは2021年6月から国民年金保険料の支払いに対するポイント還元率が100円で1ポイントから「500円で1ポイント」に下がっています。

三井住友カードでは年間100万円の利用で年会費が永年無料になるゴールド(NL)カードに人気がありますが、国民年金保険料の支払いは対象外となっています。

クレカ払いのアップデートとしては、2024年3月からは年度の途中からでも前納が可能となっています。多少遅れても前納できるのは改善といえますが、1年前納や2年前納でポイント還元をフルに得たい場合は、これまで通り2月末までの申し込みが必要です。

筆者はこれらの選択肢を比較検討した結果、今回は「楽天ペイ」で「1年前納」をすることにしました。

スマホ決済で1年前納をする場合の割引額は3620円で、2年前納に比べて大きく見劣りします。また、楽天ペイの請求書払い自体はポイント付与の対象外となっています。

しかし「楽天キャッシュ」へのチャージによるポイント還元や、期間限定を含む「楽天ポイント」を使えるメリットを考慮すると、クレカ払いで2年前納をした場合との差はだいぶ縮まります。

トータルでのおトクさは大きく変わらないのに対し、1年前納ならば前払いによって拘束される金額が2年前納の半分で済むことが判断の決め手になりました。

おトクな支払い方への関心は高まるか

ここ最近、国民年金の保険料は横ばいが続いてきたものの、2024年度は前年度より460円高い1万6980円となり、2025年度はさらに530円高い1万7510円に引き上げられます。

今後も毎年上がっていくかどうかは分からないものの、特に自分で納付する人は負担増を意識せざるを得ないことから、少しでもおトクな支払い方への関心が高まりそうです。

また、保険料の支払いや手続き全般を見ていると、さらなるデジタル化の余地があるようにも思います。

スマホ決済の請求書払いには共通して言えることですが、郵送されてきた納付書を封筒から取り出し、紙のバーコードをスマホのカメラで読み取るのは無駄が多いと感じます。

納付書を使わない納付方法として、ねんきんネットでは2024年1月から「Pay-easy(ペイジー)」で支払えるサービスが始まっています(現在はシステムの都合で休止中)。スマホ決済についても、納付書を使わずにオンラインで完結する選択肢がほしいところです。

またクレカの登録や変更についても、数年前は電子申請に対応していたようですが、現在は紙での提出か郵送が必要となっています。ねんきんネットやマイナポータルを活用し、オンラインで登録や変更できる仕組みがほしいところです。

■実際に支払ってみた(記事公開後に追記)

4月3日、国民年金保険料の納付書を用いて、楽天ペイで「1年前納」をしてみました。

楽天ペイの請求書払いではポイントの付与はないものの、楽天キャッシュの残高や楽天のポイントを使えます。

国民年金を「1年前納」で支払った様子(楽天ペイのアプリ画面より、筆者作成)
国民年金を「1年前納」で支払った様子(楽天ペイのアプリ画面より、筆者作成)

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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