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楽天の株主優待は1年間使える「音声+データ」SIMに。詳細を聞いてみた

山口健太ITジャーナリスト
株主優待が「音声+データ」SIMに(楽天グループのWebサイトより、筆者作成)

2月14日、楽天グループが株主優待の内容を再び変更し、音声とデータに対応した楽天モバイルのSIMを1年間無料で提供すると発表しました。

以前の「データ専用」が「音声+データ」に変更されたことで、細かい仕様にも違いが生じています。楽天に詳細を聞いてみました。

音声+データSIMを1年間無料で提供

昨年12月、楽天は株主優待の内容をそれまでの「楽天キャッシュ」から「楽天モバイルのデータ専用eSIM」に変更しています。

これが2月14日に再び変更され、データ専用ではなく音声も利用できるSIMに変わっています。保有株式数による違いもなくなり、100株(1単元)以上を保有する株主全員が対象となっています。

ただし楽天によれば、ミニ株などを利用して単元未満株を保有している株主は対象外とのことです。

SIMの形状は、特に指定しなければ「eSIM」で配布されるものの、事前に申し込めば物理的なSIMカードも選べるとのこと。eSIMに対応していないスマホで使いたい場合は、申し込み期間を意識したほうがよいでしょう。

音声通話の仕様については、まずは利用にあたって「本人確認」が必須になる見込みです。また基本的には1年間無料とはいえ、使い方次第では別途料金がかかる場合があるようです。

楽天モバイルの回線では、楽天のアプリを利用することで通話料金が無料になります。今回の株主優待SIMの場合、法人向けの「Rakuten Link Office」アプリを利用することで、国内通話と国内SMSは無料になると説明されています。

しかし「0570」で始まるナビダイヤルや国際通話などは無料通話の対象外となっており、後日支払いが必要になるとのことから、注意を要する点となっています。

また、楽天市場の「SPU」では2023年12月から楽天モバイル利用者向けの特典が強化されましたが、株主優待SIMについてはSPUの特典の対象外となっています。

そのため、すでに楽天モバイルを利用している人が回線を解約するのは慎重になったほうがよさそうです。個人的には、楽天モバイルユーザーの株主向けに毎月の料金を割り引いてくれるような選択肢があってもよいのではないかと思うところです。

1年間の利用期間が終了すれば自動的に解約になりますが、お金を払っても同じ電話番号を使い続けたいという要望は出てきそうです。このあたりの詳細は楽天側でもまだ検討中で、3月上旬に案内する予定としています。

株主優待としての価値はどうでしょうか。楽天によれば、この株主優待SIMは楽天モバイルの法人向けプランをベースにしており、それを株主向けに提供する仕組みとのことです。

法人向け30GBプランの料金は月額3058円で、1年間で3万6696円相当の価値があります。楽天の株式を買い付けるのに必要な資金は2023年12月時点で6万円程度だったことを考えると、優待の利回りとしては十分に高い印象です。

楽天が法人向けに提供する音声+データ30GBプラン(楽天モバイルのWebサイトより)
楽天が法人向けに提供する音声+データ30GBプラン(楽天モバイルのWebサイトより)

なお、今回の発表で株主優待に興味を持った人に向けた注意点としては、この優待は2023年12月27日の取引終了時点で株主だった人に提供されるもので、いまから楽天の株式を買い付けたとしても次にチャンスが来るのは2024年の12月です。

また今回、楽天は権利付き最終日が過ぎてから優待の内容を変更しています。次回も同じ優待が提供されるかどうかは何とも言えないことから、現時点ではオマケのようなものと考えたほうがよさそうです。

追記:
3月12日から株主優待の申し込みが始まったようです。IDとパスワードは株主に送付される第27回定時株主総会の招集通知に同封されています。SIMの発送は株主番号順となっていますが、3月29日までの先行申し込み期間に申し込めば早く受け取れるようです。
https://stockbenefit.corp.rakuten.co.jp/

楽天株主は52万人 携帯電話市場への影響は?

楽天の株主数は52万人以上いるとのことですが、これほど多くの人に1年間無料のSIMが配られることで、携帯電話市場に与える影響も気になるところです。

もちろん、株主の中には優待やSIMに興味がない人も一定数いるとは思われるものの、せっかくもらえるなら使いこなしてみようと考える人も少なくないはずです。

月に30GBのデータ容量は多くの人にとって十分な量であることから、デュアルSIMに対応したスマホなら、メイン回線のデータ消費を節約できる可能性があります。

大手3キャリアとはエリアに差があるため、単純に置き換えることはできないとしても、楽天のSIMがあればMVNOや副回線サービスの契約は不要と判断する人は出てきそうです。

MM総研の調査では、国内MVNO市場においてSIMカードを用いたサービスは2023年9月末までの1年間に30万回線ほど増加しています。楽天の株主優待SIMがこうした市場にどのような影響を与えるのか興味深いところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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