楽天「SPU」のポイント還元を大幅変更 モバイルに大きな賭け
楽天グループは、楽天市場におけるポイント還元プログラムを12月1日から大きく変更することを発表しました。
今後は楽天モバイルを強く優遇する形となる一方で、複数のサービスで獲得上限が下がります。何が目的なのか、楽天の狙いを探っていきます。
モバイル利用者を優遇、ただし獲得上限は下がる
経済圏の中でもトップクラスの人気を誇る楽天経済圏において、根幹といえるポイント還元プログラムが楽天市場の「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)です。
今回の変更における目玉は、楽天モバイル利用者の優遇です。SPUにおける買い物利用時のポイント還元は、これまで2つに分かれていた倍率が統一され「楽天モバイルユーザーなら5倍」(通常の1倍に+4倍)と分かりやすくなります。
同様に、楽天モバイルで「キャリア決済」を利用した場合は+0.5倍から「+2倍」に、楽天ひかりやホームルーターを利用した場合は+1倍から「+2倍」に、それぞれ倍率がアップします。
その一方で、今回の変更によってポイント還元の倍率や月間の獲得上限が下がるサービスが複数ある点には注意が必要です。
楽天モバイルについてはポイント倍率こそ上がるものの、獲得上限は6000ポイント(ダイヤモンド会員の場合は7000ポイント)から2000ポイントに下がります。
モバイル以外で大きなものでは、楽天プレミアムカードは+4倍から+2倍に変更され、一般の楽天カードと同じ倍率になります。獲得上限も1万5000ポイントから5000ポイントに下がります(これに伴い、楽天プレミアムカードの利用者向けには「年会費返金」の申し込みを案内しています)。
これにより、獲得できるポイントが減ってしまうことはないのでしょうか。楽天の説明によれば、「8割以上のお客様は獲得ポイントが増加するか、または変わらないと試算している」(楽天グループ プラットフォーム戦略統括部)といいます。
なぜそうなるのか、理由としては、多くの人が獲得上限を最大まで使い切っていないため、上限が下がることの影響は限定的であるためと考えられます。
その上で、楽天モバイルの利用者であれば倍率アップの効果により、獲得できるポイント数が増える場合が出てくるというわけです。
一方で、獲得ポイントが確実に減ると予想できるのが高額利用の場合です。家電やパソコンなど数十万円の商品を購入した場合、これまでは獲得上限をいっぱいまで使って大量のポイントを獲得できていたものが、今後は抑えられることになります。
そこで付与していたポイントを、日常的な金額の利用に寄せる調整を加えることで、より多くのポイントを獲得できる人の数が増える可能性があります。「薄く広く」還元する方向性という印象です。
優良顧客はついてくるか
SPUに代表される楽天経済圏のポイント還元は長年、増改築を繰り返すことで複雑になっており、ネット上には新旧さまざまな情報やテクニックが溢れかえっています。
その中で今回の変更は、「楽天モバイルなら5倍」と分かりやすくする効果があるように思います。買い物でもらったポイントで毎月の携帯料金を支払えるというのは、楽天モバイルの分かりやすい魅力になるでしょう。
一方で、気になるのが楽天市場のヘビーユーザーの存在です。SPUの複雑な仕組みを理解し、買い回りのセールを使いこなす習慣を身に付けた人を多数囲い込んでいることは、楽天経済圏の強みの1つであると筆者は考えています。
しかし今回の変更は、その根幹に踏み込んだ可能性があります。これまでの「楽天プレミアムカードなら5倍」が「楽天モバイルユーザーなら5倍」に置き換わるのは、その象徴といえるでしょう。
これまで苦戦が続いてきた楽天モバイルはプラチナバンドを獲得するなど追い風が吹いています。今後の拡大に向けて、楽天市場とSPUの力を最大限に活用しようという狙いが見えてきます。
果たして楽天経済圏を支えてきた優良顧客は「モバイル重視」の方針転換についてきてくれるのか、楽天は大きな賭けに出ることになりそうです。