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新NISA「PayPay証券」参入へ コストや経済圏との連携に注目

山口健太ITジャーナリスト
新NISAに向けた発表(PayPay証券のプレスリリースより、筆者撮影)

6月29日、PayPay証券は「新しいNISA」制度について2024年1月から利用できるよう準備を進めていることを明らかにしました。

新NISAではさまざまな金融機関が獲得競争を繰り広げるなかで、コストや経済圏との連携に注目が集まりそうです。

強みはPayPayアプリとの連携か

PayPay証券は現行のNISAには対応していないものの、3月31日のプレスリリースでは「新NISA等への対応を視野に入れた取り組み」に言及。4月27日には「新NISA制度に向けた取り組み」と具体的になり、進捗を匂わせていました。

そして今回、「新NISAの対象銘柄を中心とした投資信託の銘柄追加」を発表。「PayPay資産運用」と「PayPay証券アプリ」において、「2024年1月の制度開始にあわせてNISAをご利用いただけるよう準備を進めている」と明らかにしました。

そのためには2023年内にNISA口座の開設手続きが必要になると考えられます。PayPay証券によれば、詳細はまだ決まっていないようですが、準備を進めているとみられます。

すでに証券会社や銀行の間では新NISAの獲得競争が始まっていることを考えれば、PayPay証券が多少出遅れている感は否めません。

ただ、NISAの口座はすべて合計しても1873万口座、そのうち証券会社の口座は1237万口座(いずれも2023年3月末時点)しかないことから、日本の人口を考えれば、NISAをまだ利用していない人が大半を占めているのが現状です。

まだNISAを使っていない人を、どうやって取り込むのでしょうか。そこで強みになりそうなのが、PayPay証券はスマホ決済アプリ「PayPay」のユーザーを取り込みやすいという点です。

PayPayの5800万人の登録者のうち、2000万人は本人確認を済ませています。PayPayからPayPay証券の口座をスムーズに開設できる仕組みはすでにありますが、そこをもっと簡略化できれば、一気に新NISAの利用者を獲得できる可能性があるわけです。

似たような事例として、メルカリが始めたビットコインの取引サービスでは、本人確認済みのユーザーなら最短30秒で取引可能としたところ、提供開始から3か月強で50万人が口座を開設したと発表しています。

一方、悲観的なシナリオとしては、PayPayユーザーの中でも投資をする余裕がある人は、すでに他の証券会社に囲い込まれていたり、PayPay証券のシンプルなサービス内容に不満を感じたりする可能性が考えられます。

事業再編を発表したLINE証券では、少額取引が多い若年層が集まったことで、収益性に乏しかったとの課題が指摘されています。PayPay証券の場合も、本当にお金に余裕のある層を取り込めるのか、という不安はありそうです。

PayPay証券でNISA、メリットは?

PayPayユーザーにとって、新NISAの選択肢は必ずしもPayPay証券だけではありません。そこで気になるのが、PayPay証券ならではのメリットはあるのか、という点です。

まず、新NISAで長期投資を考えている人にとっては、「超」低コストの投資信託銘柄の取り扱いが増えていることが魅力になりそうです。

特に「PayPay投資信託インデックス」シリーズからは、「アメリカ株式」に加えて「先進国株式」と「世界株式」が新たに登場。他社の類似商品と比べても、より低コストを狙う姿勢がうかがえます。

また、長期の投資において本質的に重要とはいえないものの、証券会社選びにおいてはカード投信積立のポイント還元が重視される傾向にあり、楽天証券は還元率を引き上げています。PayPay証券としても、その重要性については認識しているようです。

PayPay経済圏との連携を含め、総合的に見て他社を上回るほどおトクになる組み合わせが出てくるかどうか、注目したいところです。

また、ライバルが増えれば手数料やポイント還元の競争は激しくなることを考えれば、新NISAの口座をもう決めてしまった人にとってもPayPay証券は面白い存在になりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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