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楽天「カード投信積立」でポイント引き上げ いつまで続けられるか

山口健太ITジャーナリスト
「カード投信積立」でポイント引き上げ(楽天証券のプレスリリースより、筆者撮影)

4月13日、楽天証券は投信積立のクレジットカード決済において、ポイント還元率を「引き上げる」ことを発表しました。6月の積み立てから適用されます。

同社は昨年9月にポイントを引き下げたばかりですが、その背景に証券会社の負担が大きいとの見方もあります。今回はどれくらい続けられるのか、楽天証券に聞いてみました。

カードの種類に応じて0.5〜1%還元

投資信託の積み立てにおいて、クレジットカード決済の人気が高まっています。入金の手間がいらないという点では銀行口座からの引き落としと同じですが、ポイント還元を考慮するとおトクになります。

楽天証券は2018年にカード投信積立を始め、1%のポイントを還元してきました。しかし2022年9月の積み立て分からは、主要な低コストな銘柄について還元率を「0.2%」に引き下げています。

その反発なのか、投信積立の設定件数や金額が伸び悩んでいるのではないかとの指摘もありました。この点について楽天証券は、「相場の影響が大きいとみている。投信積立以外も影響を受けている」(広報)と説明しています。

一方、他のネット証券各社は、楽天を狙い撃ちするかのようにカード投信積立を強化しています。楽天から他社への移行を宣言するインフルエンサーも出てきている状況でした。

その中で発表されたのが今回のポイント引き上げです。年会費無料の「楽天カード」についても一律で0.5%還元に引き上げており、SBI証券と三井住友カード(一般カード)の組み合わせに並んでいます。

また、楽天ゴールドカードでは0.75%、楽天プレミアムカードでは1%と還元率が上がります。他社を大きく上回るほどではないものの、楽天から他社に乗り換えるほどではない程度のテコ入れになっている印象です。

ただ、気になるのはこれが「いつまで続くのか」という点でしょう。つみたてNISAなどで人気のインデックスファンドは低コスト化が進んでおり、ポイント還元は証券会社の負担が大きいことから、持続的な提供は難しいとの見方があります。

引き上げた分のポイントはどこから捻出したものなのか、楽天証券は詳細を明かしていないものの、「期間限定ではなく、恒久的なものとして設計した」(広報)と強調しています。

そのヒントになりそうなのが、年会費が高いカードほど還元率が高くなるという新たな仕組みです。

年会費が高いカードほど還元率が高い(楽天証券のプレスリリースより)
年会費が高いカードほど還元率が高い(楽天証券のプレスリリースより)

(なお「楽天ブラックカード」については、カードの性質上、還元率は非公開とのこと。SNS上には「2%還元」との案内が届いたというカード利用者からの報告が複数あるようです)

たとえば毎月5万円を積み立てる場合、1%還元なら毎月500ポイント、年間で6000ポイントを得られます。これなら年会費1万1000円の楽天プレミアムカードを作っても、元が取れると考える人が増えそうです。

積み立てだけを考えれば、年会費無料のカードでもマネックス証券は1.1%、auカブコム証券は1%還元です。しかし楽天プレミアムカードは楽天市場でのポイント倍率が高まるなど、楽天経済圏のメリットを活かせるのが大きな特徴といえます。

また、今回の変更にあたって楽天証券が狙いを定めるのが、2024年に始まる新NISA制度です。特に、新しい「つみたてNISA」では、非課税の枠が年間120万円(毎月10万円)に広がります。

とはいえ、カード投信積立には内閣府令の規制があり、毎月の上限を5万円とすることで各社は横並びとなっています。あらためて楽天証券に確認したものの、この点に変化はないそうです。

しかし楽天証券なら「楽天キャッシュ」を毎月5万円まで併用できるため、チャージ方法によっては、ポイント還元を得ながら合計10万円の投資が可能です。これは国内の主要ネット証券では楽天証券だけの特徴としています。

クレジットカード決済と楽天キャッシュは併用できる(楽天証券のWebサイトより、筆者作成)
クレジットカード決済と楽天キャッシュは併用できる(楽天証券のWebサイトより、筆者作成)

ポイントをどこまで重視するか

ポイントの引き上げ自体は大いに歓迎したいところではありますが、長期にわたる資産形成にはわずかな影響しかない、という点には注意が必要です。

楽天が4月6日に開いた報道関係者向けのセミナーでは、「楽天グループではなく個人の見解になるが、ポイントはあくまできっかけ作り。NISAは10年単位で付き合っていく制度であり、将来的にサービス内容の変更もあり得る」(楽天証券経済研究所副所長兼ファンドアナリストの篠田尚子氏)とのアドバイスがありました。

そういう意味では、自分にあった方法で積み立てを続けることが最も重要といえるでしょう。その上で、将来のことは誰にも予想できない以上、目の前にある0.5%、1%のポイントを確実に取っていきたいという気持ちも分かります。

今後も新NISAに向けて各社の動きが予想される中で、分かりやすい数字でおトクさを示すことのできるポイント還元率は、引き続き競争の軸になりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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