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アップル決算で高まる「インド」の存在感

山口健太ITジャーナリスト
インド・ニューデリーにオープンしたアップルストア(アップル提供画像)

5月4日(米国時間)にアップルが発表した2023年1-3月期決算では、市場予想を上回るiPhoneの売れ行きが話題になっています。そこで見えてきたのが、経済成長が続くインドの存在感です。

インドでiPhoneが売れている

アップルの2023年1-3月期(1月1日から4月1日までの13週間)は、為替レートの影響もあり、売上高が前の四半期に続くマイナス成長(前年同期比-2.5%)という厳しい結果になりました。

とはいえ、現在の経済情勢を考えれば悪くない結果と市場は受け止めたようです。決算発表の翌日、アップルの株価は4.7%伸びており、同日のNASDAQ(2.25%高)を上回っています。

注目されたのは売上高の54%を占めるiPhoneの売れ行きです。事前の市場予想である「-3.5%」に対して結果は「+1.5%」と逆転し、3月期の最高記録を更新しています。

いったいiPhoneはどこで売れているのでしょうか。決算発表後のカンファレンスコールで挙がった市場はインド、インドネシア、トルコ、アラブ首長国連邦で、3月期の売上を更新したといいます。

特に言及回数が多かったのがインドです。アップルは2022年9月の「iPhone 14」からインドでの生産を始めており、今後は数年をかけてインドでの生産比率を高めていくとみられています。

あくまで中国での生産がメインであることに変わりはないものの、コロナ禍では中国国内の混乱により、日本でもiPhoneやMacの在庫が消えるなど供給不足を招いたことから、リスク分散という点で評価されそうです。

そして最も重要なポイントは、インドで作ったiPhoneを国外に輸出するだけでなく、インド国内でも売っていくという点でしょう。4月にはインドの2都市にアップルストアをオープンしています。

Apple Saket(ニューデリー、Googleマップ

Apple BKC(ムンバイ、Googleマップ)

4月のオープンなので、今回発表した1-3月期の決算には直接関係ないものの、インドの高価格帯スマホにおいて、アップルは首位のシェアを維持しているとの調査もあります。

インド全体ではサムスンと中国メーカーによる安価なAndroidスマホが台数シェアの大半を占めているとみられますが、現地を訪れたティム・クック氏は中流階級が増えていることを指摘。今後はiPhoneに乗り換える人が増えるとの期待感がうかがえます。

ニューデリーの店舗の様子(アップル提供画像)
ニューデリーの店舗の様子(アップル提供画像)

もちろん、Androidから上位のAndroid機種に買い替えるケースもあるとは思いますが、iPhoneの優位性はブランド力にあると考えられます。

日本ではiPhoneユーザーが多すぎて実感が湧きませんが、新興国においてiPhoneはまだまだステータスであり、豊かさの象徴としてiPhoneを持ちたいという需要があるためです。

iPhoneを使う人が増えれば、インド向けのアプリやコンテンツが充実し、アップルの売上の2割を占めるサービス事業(App StoreやApple Musicなど)を底上げする効果も期待できます。

日本での売上はどう?

地域別の数字では、日本での売上が71億7600万ドル(約9676億円)と、6四半期連続のマイナス成長となったことが目を引きます。これは2022年春に始まった急激な円安の影響と考えられます。

アップルは売上をドルで計上するため、たとえば10万円のiPhoneを売った場合、1ドル=110円なら909ドルの売上が立ちますが、1ドル=140円では714ドルに減ってしまいます。

その対策として、2022年には日本での値上げが話題になりました。ざっくりした比較ではありますが、アップルの売上を円建てに換算してみると、日本の成長率は世界平均をおおむね上回っているように見えます。

次の4-6月期からは前年と比べる際の為替レートの差が縮まることから、日本での売れ行きをより比較しやすくなるでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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