あのイルカを超えたか? 「BingのAI」を試してみた
マイクロソフトが検索エンジン「Bing」に対話型AI「ChatGPT」の技術を組み込んだ新機能を、プレビューとして公開しています。
この手のアシスタントとしては、かつて不評だったOfficeのイルカ(カイル君)を思い出す人がいるかもしれません。あのイルカを超えることはできたのか、実際に試してみました。
Webの検索結果をAIが要約
新しいBingと開発中の「Edge」ブラウザーは、正式リリース前のプレビュー版として公開されています。興味があれば順番待ちをすることで誰でも参加できるようです。
プレビューのため、さまざまな不具合が予想されます。日本マイクロソフトによれば、SNSなどに公開することは問題ないとのことですが、Edgeの機能を使ってフィードバックを送ることを期待しているそうです。
このBingには、いま話題の対話型AI「ChatGPT」が組み込まれています。正確には、開発元のOpenAIによる次世代の大規模言語モデルで、ChatGPTより強力とされています。
さて、このプレビューで最も気になるのは、検索エンジンにAIが組み込まれるというのは具体的にどういうことなのか、という点でしょう。
Bingでは、グーグルと同じようにキーワードを入力してWebサイトを検索できます。この画面に「チャット」が追加されており、AIと対話できるようになっています。
「今日の天気」のように基本的な情報を求める検索キーワードに対して、BingのチャットAIは検索結果のWebサイトを要約した回答を返してくれます。
要約を作る上で参考にしたWebサイトは「詳細情報」にリンクが並んでおり、ここをクリックすることでWebサイトを開くことができます。
ChatGPTでは、誰もが間違いと分かるようなことを自信満々に言い切る問題がありました。これに対してBingは、検索の上位にヒットしやすいWikipediaやメディア、企業のWebサイトを引用するので、明らかな間違いは少ない印象です。
また、ChatGPTは2021年までの情報しか学習していませんが、Bingは今日の天気や昨日のスポーツの試合結果のように、Webサイトに書かれていることであれば最新の情報を返してくれます。
一方、単純な知識ではなくAIに考えさせるような質問をすると、検索結果の要約ではなく、独自に生成したと思われる文章を返してきます。これはChatGPTと同じ感覚です。
新しい体験としては、ブラウザーのサイドバーからもAIとチャットすることができます。分からないことを聞いてみると、複数のWebサイトから検索した情報を要約して表示してくれました。これはOfficeのアシスタント機能の使い勝手をはるかに超えている印象です。
ChatGPTと同様に、BingのAIは文章の意味までは理解していないようです。そのため、Webサイトの構造によっては間違った要約を表示する場合がありました。正確な情報を得るためには、自分でWebサイトを読んで確認する必要がありそうです。
ほかにも、Edgeのサイドバーには「下書き生成」機能が用意されています。執筆分野やトーンなど指定して、文章を書いてもらうことができます。
ここでは「クレジットカードのポイント還元」について、「熱狂的」な「ブログの投稿」の下書きを生成したところ、以下のような文章が出てきました。
画像や文章を生成するAIでは「プロンプト」と呼ばれる指示を工夫することで、思い通りの結果を得られます。これを使いこなすにはスキルが必要ですが、分かりやすい操作パネルになっていれば誰でもAIの性能を引き出すことができそうです。
また、文章を作る機能がオフィス製品と連携すれば、Eメールやビジネス文書の作成を効率化できる可能性があります。AIによって我々の働き方はどう変わっていくのか、期待と不安を感じさせる機能といえます。
AIに要約されると「広告」はどうなる?
全体的な印象として、ChatGPTがいかにも「研究用」の見た目だったのに対して、新しいBingとEdgeは一般ユーザーにも親和性が高くなっている印象です。
ただ、気になるのは「広告」との兼ね合いです。AIが返してくる結果には、いまのところ広告が含まれていないようです(質問文によっては広告が出るようです)。
また、AIによる要約にユーザーが満足してしまうと、元となったWebサイトへのアクセスは減少することになります。これは広告収益で運営されているWebサイトにとって、売上機会の損失につながります。
このままでは無料のWebサイト運営は難しくなり、有料化が進むのではないか、といった懸念があります。こうしたAIによる要約と広告モデルをどのように両立させていくのか、議論が巻き起こりそうです。