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グーグル「最新AI」披露するも株価急落 何が起きた?

山口健太ITジャーナリスト
グーグルがAIに関するイベントを開催(グーグルのライブ配信より)

2月8日、グーグルはフランス・パリで最新AIに関するイベントを開き、検索エンジンやGoogleマップの組み込む新機能を披露しました。

ところが、その後グーグル(アルファベット)の株価は一時9%急落する事態になりました。いったい何が起きたのか、これまでの流れを振り返りながら解説します。

期待の「Bard」に間違いは許されない?

今回グーグルが発表したのは、画像とテキストを組み合わせた「マルチ検索」や、Googleマップで没入感を得られる「イマーシブ ビュー」など、最新AIを利用した新機能です。

ただ、イベントにはスンダー・ピチャイCEOが登壇することもなく、SNS上の反応を見ても、盛り上がりに欠ける印象でした。その背景には、グーグルへの期待が高まりすぎていたことがあるようです。

いま、テック業界の話題を独占しているのは、OpenAIによる対話型AI「ChatGPT」です。まだまだ不完全ではありますが、問いかけに対して自然な文章を返すことが注目され、検索エンジンを置き換える可能性が注目されています。

これは検索広告が売上の半分を占めるグーグルにとって脅威といえるものです。さらに2月7日(米国時間)には、マイクロソフトが自社の検索エンジン「Bing」にOpenAIの技術を組み込むことを発表していました。

グーグルはこのイベントを、AIの研究拠点があるパリから最新の成果を披露するものと位置付けており、それ自体に問題はなかったのですが、世の中の関心が「ChatGPTへの対抗策」に集まりすぎていた感があります。

「Bard」の紹介パートもあったが、ほぼ事前に発表済みの内容だった(グーグルのライブ配信より)
「Bard」の紹介パートもあったが、ほぼ事前に発表済みの内容だった(グーグルのライブ配信より)

さらにタイミングの悪いことに、ChatGPT対抗として期待されるグーグルの「Bard」について、オンライン広告の中に不正確な知識に基づく回答が含まれていたことをロイターが報道し、大きな注目を浴びています。

こうした広告は、グーグルが慎重に内容を選んで出していると考えられます。そこに不正確な回答が含まれていたとすれば、Bardの性能に疑問を持たれるのはやむを得ないでしょう。

その一方で、グーグルに同情したくなる面もあります。ChatGPTは挑戦者という立場であり、どんなに間違いを連発しても大目に見られています。

マイクロソフトのBingも、検索エンジンとしてはグーグルの後塵を拝しており、これ以上失うものがありません。

これに対してBardは、最初からグーグルの未来を背負うことが期待されており、少しでも不正確な答えを出すと叩かれるというわけです。

グーグルの株価はこの日の終値で7%以上下落。これはNASDAQ100指数(-1.8%)と比較して大きな下落といえます。対するマイクロソフトの株価は一時3%高となる場面もありました。

バズワード化するChatGPT

2022年11月末に登場したChatGPTは、リリース直後の熱量が衰えるどころかますます関心が高まっており、次々と面白い回答がSNSでシェアされたり、新たな用途が考案されたりと盛り上がっています。

混雑のせいかログイン時に待たされることも(ChatGPTのWebサイトより)
混雑のせいかログイン時に待たされることも(ChatGPTのWebサイトより)

また、画像を生成するAIとあわせて生成系AI(ジェネレーティブAI)というカテゴリでくくられるようになり、テック業界の枠を超えて、社会に与える影響を語る識者が増えています。

その一方で、ChatGPTを連想させる発表をした企業は株価が急騰するといった事例が出てきており、バズワードとして期待が先行しすぎている感もあります。

今後はどうやって誤情報の拡散や悪用を防いでいくかといった課題もあり、グーグルとマイクロソフトはいずれも「責任あるAI」の重要性を認めています。ChatGPTを巡る話題はいまがピークではなく、長い競争が始まったばかりといえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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