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時系列の価値を再確認 なぜTwitterは「おすすめ」を見せたがるのか

山口健太ITジャーナリスト
Twitterがタブ切り替えを導入(Web版のTwitterより、筆者作成)

Twitterの画面表示が変わり、iOS版やWeb版では「おすすめ」と「最新ツイート」をタブで切り替え可能になっています。

しかし、このタブ切り替えは以前に導入した際には不評で、取り下げたこともあります。なぜTwitterは「おすすめ」を見せたがるのか、背景を考察します。

Twitterがタブ切り替えを「再導入」

Twitterのタイムライン画面に、「For you(おすすめ)」と「Following(最新ツイート)」というタブが加わっています。

追記:

この記事を公開後、1月18日頃にWeb版の表示が「おすすめ」と「フォロー中」に変わりました。

公式アカウントによれば、1月11日にはiOS版1月14日にはWeb版に導入しており、今後はAndroid版にも展開するとのことです。

左側の「For you(おすすめ)」は、時系列ではなく、自分がフォローしているアカウントやトピックからの投稿や広告が表示されます。以前は「ホーム」という名前で、ホームについてはWebサイトに詳しい説明があります。

おすすめツイートを表示する「For you」(Web版のTwitterより、筆者作成)
おすすめツイートを表示する「For you」(Web版のTwitterより、筆者作成)

右側の「Following(最新ツイート)」は、時系列(新着順)表示です。フォローしているアカウントによる投稿やリツイートが新しい順に表示され、その間に広告が入る場合があります。

最新ツイートを表示する「Following」(Web版のTwitterより、筆者作成)
最新ツイートを表示する「Following」(Web版のTwitterより、筆者作成)

こうしたタブ表示は2021年10月にテストを始め、2022年3月には広く導入されたものの、不評の声が相次いだことで、数日後に取り下げる騒ぎがありました。

その後はタイムライン右上のアイコンから切り替える方式に戻ったものの、今回、再びタブ切り替えが復活した形です。

これまではアイコンから切り替える方式だった(iOS版より、筆者作成)
これまではアイコンから切り替える方式だった(iOS版より、筆者作成)

復活とはいえ、以前とは少し挙動が違うようです。このタブ切り替えが不評だった理由の1つに、アプリ起動時などに自動的に「おすすめ」が開くという点がありました。

一方、今回は「おすすめ」と「最新」の選択状態が記憶されるようです(筆者が試した限りでは)。これは時系列表示を好むTwitterのヘビーユーザーにとっても受け入れやすい仕様といえそうです。

追記:

1月19日頃からこの選択状態が記憶されず、Web版を開いたときや更新したときに「おすすめ」が自動選択されるようになったようです。

その後、イーロン・マスク氏はおすすめの自動選択を中止し、選択状態を記憶するように戻すとの方針をツイートしています。

それではなぜ、Twitterはこうまでして「おすすめ」を見せたがるのでしょうか。その背景には、ユーザーごとの利用スタイルの違いがあると考えられます。

ヘビーユーザーの場合、自分がフォローしている人の投稿だけ読みたいと考えています。1日に何度もアクセスするので、未読だけを時系列で表示してくれるのが最も効率的です。

しかし、そうしたヘビーユーザーは全体のごく一部でしょう。多くのライトユーザーは最初におすすめされた有名人をフォローして、たまにしか見ないという人も少なくないと考えられます。

そういう人が最新のツイートだけを見ても、話題についていけません。そこで、面白いところだけをダイジェストで見せるのが「おすすめ」表示といえます。

これを踏まえた上で、今回導入されたタブ切り替えを使ってみると、朝起きたときや外出先から帰宅したときなど、Twitterから離れていた間の話題は「おすすめ」から把握できます。

その中で、あとで読みたいものがあれば、他の人からも見える「いいね」や、他の人からは見えない「ブックマーク」といった機能で保存しておくことができます。

時間があるときは「最新ツイート」から時系列で見ていきます。リストを作っている人の場合、リストの「固定」機能を使うとタブの右側に表示されるので、順番に未読を消化していくといった使い方もできそうです。

リストの「固定」機能を使うと、タブの右側に表示される(Web版のTwitterより、筆者作成)
リストの「固定」機能を使うと、タブの右側に表示される(Web版のTwitterより、筆者作成)

時系列の価値を再確認

最近のSNSは、動画やゲームと時間の奪い合いになっています。FacebookやInstagram、YouTubeやTikTokなどでは、AIを駆使してユーザーを画面に惹き付ける競争が激化しています。

このAIは、人間による選択や意思決定を支援してくれる存在でもあります。たとえば難しい作業をするとき、AIの指示に従って働くといった機会はこれから増えていくでしょう。

コンテンツ消費についても同様に、とても全部は消費できないほど膨大な選択肢がある中で、AIのおすすめに可能性を感じる面はあります。

一方で、Twitterは他のSNSと比較しても、リアルタイムでの情報発信のように時系列表示を前提とした使い方が普及しています。AIによる「おすすめ」との切り替えが容易になったことで、時系列表示の価値を再確認できるかもしれません。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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