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マイナカードを持たない人はどうなる? 2024年秋「保険証廃止」

山口健太ITジャーナリスト
マイナンバーカードを保険証として利用できる(マイナポータルより、筆者撮影)

10月13日、マイナンバーカードへの健康保険証の一体化の概要が発表されました。これまでの保険証は2024年秋に廃止されることから、「カード取得の実質義務化ではないか」との声も上がっています。カードを持たない人はどうなるのでしょうか。

マイナカード「ない人」向けの仕組みが必要に

マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにする登録制度はすでに始まっており、マイナポイント第2弾でポイントをもらう条件の1つになっています。

保険証の一体化というと、あたかもカードの券面やICチップに医療や保険に関する情報が記載されるように思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。

実際には、ICチップに入っている電子証明書と4桁の暗証番号による本人確認に基づき、オンライン化されたシステムから情報を引っ張ってくる形になるようです。

また、よく混同されがちですが、12桁のマイナンバーとも直接は関係がありません。仕組み上、医療機関がマイナンバーを知ることはできないとされています。このあたりは厚生労働省のサイトで説明されています。

ここまではおさらいですが、今回大きく注目されたのは、既存の健康保険証を廃止する時期を「2024年秋」と明確にした点です。

マイナンバーカードの発行枚数は約6200万枚(9月末時点)、そのうち保険証として利用登録をしたのは約2480万件(10月2日時点)という現状から考えると、かなり挑戦的な目標という印象を受けます。

その狙いとして、デジタル庁は「まずは期限を設けることで、導入に向けた動きを加速させる」との考え方を示しましたが、これが賛否両論を呼んでいます。

保険証を廃止するということは、マイナンバーカードの取得を全国民に実質的に義務化するようなものではないか、との声も多いようです。

この点についてデジタル庁は、マイナンバーカードの取得は義務ではなく、申請主義のまま変わらないことを強調。カード取得の「お願い」を今後も続ける方針です。

そのため、2024年秋の時点でもカードを持っていない人は一定数いるはずです。その人たちは、カードがないというだけの理由で保険を使えなくなるのか、という問題があります。

この点はデジタル庁も検討課題として挙げており、カードを持たない人に医療の現場がどう対応していくか、厚労省や総務省と検討していくとの方針を示しています。

実際には、紛失や盗難などで一時的にカードが手元にない場合が考えられるため、たとえ全国民がマイナンバーカードを作ったとしても、何らかの制度は必要になるでしょう。

既存の健康保険証を紛失した場合には、「有資格証明書」を発行することで一時的に保険を使えるようにする仕組みがあるとのことから、これに似たような制度になる可能性があります。

2024年秋をもって保険証は「原則廃止」となるものの、カードを持たない人に対する何らかの制度も用意されるというのが、現時点でのロードマップといえそうです。

カード取得「義務化」ではない

マイナンバーカードについて、河野太郎デジタル大臣は「デジタル社会のパスポートの役割を果たすもの」と表現しています。

スマホを使う上でアップルやグーグルのアカウント設定がほぼ必須となっているように、日本でデジタルのサービスを受けるには、マイナンバーカードのICチップが必要になります。

デジタル化を進める上で、なるべく多くの人にカードを取得してほしいと筆者は考えているものの、これは「カードの取得を義務化する」こととイコールではなく、むしろ大きな隔たりがあります。

世界にはこうした制度を義務化している国もあり、デジタル化の推進という点でそのほうが効率的ではないかという話はよくあるものの、「実質義務化」に反発の声があるように、日本ではまだ早すぎる印象です。

カードを作っていない人にもさまざまな事情があり、デジタル庁によれば40代の発行枚数は意外と少ないといいます。このことから、忙しくてカードを作る時間がない人の存在が浮かび上がってきます。

マイナンバーカードの利便性が向上する一方で、カードがないと徐々に不便になっていくことは避けられないでしょう。カードを持ちたい人に向けたサポートや理解を深めるための取り組みがますます重要になりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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