NISAは「高所得者」向け? SNSで議論広がる
資産所得倍増プランやNISA拡充についての報道が増えていることを背景に、投資をやるべきかどうか、SNSで議論が広がっています。その中で気になったのが「NISAは高所得者向けだ」との声です。本当にそうなのでしょうか。
NISAは投資できる余裕がある人向け?
Twitterでは「資産所得倍増」や「NISA」といったワードがたびたびトレンドに入るなど、SNSで投資について話題になることが増えています。
先週は、日経電子版に掲載されたNISAとiDeCoについての漫画や、金融庁が西村博之(ひろゆき)氏と対談した動画に大きな反響があったようです。
NISA拡充に向けた期待も高まっています。日本証券業協会は、一般NISAを年120万円から240万円に、つみたてNISAを年40万円から60万円に拡大することを提言しています。
すでに十分な資産がある人には取るに足らない金額ですが、これから資産形成を始める人にとって、NISAによる非課税の枠が増えるのは心強いといえます。
こうした動きに対して、SNS上では「富裕層優遇ではないか」との根強い批判があるようです。
富裕層とは、一般に金融資産が1億円以上の世帯を指すといった定義がありますが、この場合はNISAの枠を使い切れる「高所得者層」を指していると考えられます。
たとえばクレジットカード決済による投信積立は、一般に月5万円が上限となっていますが、足りないので複数の証券会社を使う人が増えています。
一方で、つみたてNISAの月3万3333円という枠を使い切れない人にとっては、枠が増えたとしても直接的な恩恵はないというわけです。
最初は多くの人が小さな金額から始めるので、本来は焦る必要はないはずですが、身近な人たちとの間での格差が広がることに、リアルな危機感を抱いているのかもしれません。
投資を始めるにはまとまった資金が必要である、というイメージも残っているようです。しかしLINE証券のようなスマホ証券は、値がさ株でも1株から買えるサービスを提供しています。
PayPayの資産運用やつみたてNISAに対応した投資信託は100円から買い付けが可能です。さらにネット証券各社はポイント経済圏との連携を深めており、ポイントを使えば元手がほぼゼロの状態で始めることができます。
しかし、投資に関心の低い層にはこうした情報が届いていない可能性があります。これでは資産や所得の格差以前に、情報やマインドセットの格差が広がりかねません。そこで注目したいのが、広くリテラシーを身に付けるための「金融教育」です。
MMD研究所とVisaは、高校での金融教育が2022年4月に義務化されたことについて調査を実施しています。これによると、高校生の60.3%が「学びたい」と回答するなど学習意欲の高さが感じられます。
一方で、高校生の親は21.9%が「自分の金融に関する知識が不足している」と感じているなど、家庭内での金融教育に悩みを抱えていることが明らかになっています。
8月29日には、金融庁が全世代を対象とした金融教育の必要性を提言すると日本経済新聞が報じています。高校で学ぶ機会がなかった大学生や社会人も、学び直しが必要になりそうです。
これから始めるなら「ポイント投資」は最適
投資についてどのように向き合うべきかは、収入やリスク許容度、年齢などによる部分が大きく、一概に答えを出すことは難しいと筆者は考えています。
いま投資を始めた場合、米国での利上げは当面続く方針であることから、短期的には含み損を抱える可能性があります。しかし長期で見ればタイミングを計らずに早く始めるべきという考え方もあるでしょう。
そういう意味では、「ポイント投資」のように損をしても心理的なダメージが少ない手法は、この状況に適しているといえそうです。金額的には小さなものであっても、自分でやってみないと分からない感覚を学ぶこともできます。
資産があれば老後が安心というだけでなく、転職や起業といった大きな挑戦をしやすくなるなど、人生の選択肢を広げるためにも活用できます。少しでもおトクな方法があれば、筆者も積極的に紹介していくつもりです。