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楽天がiPhoneを値上げ アップルよりも高く「安売り」終了か

山口健太ITジャーナリスト
楽天がiPhoneを値上げ(楽天モバイル 楽天市場店より、筆者撮影)

7月6日、楽天モバイルがアップル製品の価格改定を発表しました。値上げするだけでなく、これまでとは違ってアップルより高い価格に設定されているのが特徴です。なぜ「安売り」をやめるのか、背景を考察します。

値上げ後は「アップルより高い」

楽天モバイルは2021年4月にアップル製品の取り扱いを始めました。MVNO事業者の中には独自調達した在庫を販売しているところもありますが、アップルから直接仕入れているという点で、楽天は大手3キャリアに並ぶ存在になったといえます。

一般に、携帯キャリアによるiPhoneの販売価格は、アップルと同額にすると利益がほとんど出ないか、赤字になるとみられています。そのため一定の上乗せをするのが通例でしたが、楽天だけはアップルと同水準に設定しており好評を博してきました。

今回の価格改定で、楽天はiPhone 13シリーズを30%前後、iPhone 13 Proシリーズを25%前後、第3世代iPhone SEを15%前後、値上げしています。

アップルが値上げしたことで、楽天も値上げせざるを得ないのは分かりますが、これまでと異なるのは「アップルより高い」点です。

たとえばiPhone 13の128GBモデルを9万6470円から12万3800円に値上げしており、これは7月1日に値上げされたアップル直販価格の11万7800円を約5%上回っています。

楽天モバイルの値上げ後の価格はアップルより高くなった(筆者作成)
楽天モバイルの値上げ後の価格はアップルより高くなった(筆者作成)

値上げの理由について、楽天モバイルは「7月1日のアップル社の販売価格改定を受けて、弊社における販売価格の見直しを行った」(広報部)としているものの、アップルより高い理由については「販売戦略によるもの」(同)との回答にとどまり、明かしていません。

これまでの楽天の考え方は、楽天モバイルを契約した人は携帯料金が安くなるので、浮いたお金を楽天市場での買い物に回すなど、経済圏全体にシナジーをもたらすというものでした。

こうした背景があるので、「端末価格はアグレッシブに行ける」と楽天グループの三木谷浩史社長が決算会見で語っていたこともあります。

その一方で、楽天は7月1日に移行した新料金プランで「1GBまで無料」を廃止するなど、過剰な安売りはやめて、利益に貢献するユーザーを重視する方針に切り替えつつあります。

それに加えて、iPhoneは買取価格が高騰していることもあり、転売目的での購入が多かったのではないかという指摘もあります。このあたりも値上げに影響した可能性がありそうです。

ポイント還元でアップルより安くなる場合も

こうして楽天のiPhoneはアップルより高くなってしまいましたが、ポイント還元を考慮するとまだアップルより安くなる場合がありそうです。

楽天のサービス利用(SPU)やセール中の買い回りによって上がるポイント倍率は、楽天モバイル 楽天市場店で販売されているiPhoneにも適用されます。

たとえば7月6日現在は「お買い物マラソン」が開催されており、ポイント倍率は高くなりやすい状態です。筆者の場合は16倍となっており、iPhone 13 128GBモデルを購入すると1万3835ポイントが付与されます。

ポイント還元でアップル直販より安くなる場合も(Webサイトより、筆者作成)
ポイント還元でアップル直販より安くなる場合も(Webサイトより、筆者作成)

楽天経済圏を使っている人であれば、アップルより少し安く買える場合があるといえます。また、アップルのギフトカードを楽天市場で買うという方法なら、手間はかかりますが、さらに安く買える可能性があります。

他キャリアはまだ価格を据え置きとしているものの、いつ値上げがあってもおかしくない状況といえます。その場合、楽天が価格競争力を維持できるのかどうかも注目ポイントになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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