3月15日にリリースされた「iOS 15.4」では、「マスク着用時でもFace IDを使用する」機能が加わりました。外出時などにiPhoneを利用する際の大きな課題が、ようやく改善しそうです。

アップルの顔認証機能「Face ID」は、指紋認証のTouch IDを置き換える形でiPhoneの主要モデルやiPad Proに搭載されています。しかし当初からマスクとの相性の悪さは指摘されており、コロナ禍でマスク着用の機会が増えたことで、大きな課題となっていました。

これに対してiOS 15.4では、iPhone 12以降の機種において、マスクを着けたまま顔認証ができる機能が加わりました。この機能はデフォルトではオフになっており、手動でFace IDの設定画面を開いて有効化し、あらためて顔をスキャンする必要があります。

Face IDの設定時には顔を2回スキャンするのですが、メガネをしたまま設定しようとしたところ、2回目はメガネを外すよう指示がありました。この機能では、目元の情報をより多く取得する必要があるようです。別のメガネを追加する機能も用意されています。

顔の登録が終わると、マスクをしていないときとまったく同じ感覚で、マスクを着けたまま画面ロックの解除ができました。これまで何度も苦労した経験があるだけに、この手軽さはなかなか感動できるものがあります。

さらに、画面ロックの解除だけでなく、Apple Payでの支払いや、起動時にFace IDを求められる銀行のアプリ、パスワード管理の「1Password」の使用なども、マスクを着けたままできるようになりました。

すでにApple Watchと連携することで、画面のロック解除だけは実現していましたが、今回の新機能ではFace IDによる認証が必要なすべての場面で、マスクに対応したようにみえます。

この機能はiPhoneの機種選びにも影響を与えそうです。マスクを理由に、指紋認証に対応したiPhone 8やSEを使い続けていた人にとって、iPhone 13などFace ID対応機種に乗り換えるきっかけになるかもしれません。

セキュリティはやや劣る？

マスク着用時の使い勝手が改善されたこと自体は朗報ですが、目元だけの顔認証で、本当に大丈夫なのでしょうか。

アップルのWebサイトには「フルフェイスでの顔認証のみに設定した場合に最も精度が高い」との注意書きがあります。最高のセキュリティを求めるのであれば、マスク着用時のFace IDは有効化しないほうがよいとの印象を受ける記述です。

iPhoneを使っているとFace IDによる顔認証は頻繁に求められるため、高速かつ簡単であることが期待されます。一方で、Face IDが通ればiPhoneの中にあるほぼすべての情報や機能にアクセスできることから、非常に高いセキュリティが求められます。

このように利便性とセキュリティの両方が求められる機能において、マスク着用時のFace IDはやや「利便性」側に寄せたといえそうです。アップル側でも十分な検証をした上でリリースしているとは思われるものの、広く一般に使われ始めることで、新たなリスクが見つかるかもしれません。