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Facebook「メタ・ショック」で時価総額29兆円を失う。今後の展望は?

山口健太ITジャーナリスト
メタバースのイメージ(Metaの発表イベントより)

米Meta Platforms(旧Facebook)の2021年10-12月期決算は市場の期待を下回り、翌日の米国市場では株価が約26%下落。約29兆円もの時価総額を失う結果になりました。いったい何が起きているのでしょうか。

Metaは「GAFA」の一角として株式市場での存在感は大きく、26%も下落するのは世界的なインパクトがあります。米国時間3日正午時点で約27兆円、終値で約29兆円という時価総額の減少は、ブルームバーグによれば1日で失われた額として史上最大規模とのことです。

Metaの株を直接保有していない人でも、S&P500指数に連動する投資信託などを積み立てている場合は影響があります。日本の年金積立金を運用するGPIFも、外国株式の一部として2021年3月末時点で約5400億円分のMeta株式を保有していました。

決算では売上高がまずまずの伸びを示したものの、1株あたり利益(EPS)や次の2022年1-3月期の売上予想が期待を下回る結果になりました。2022年に入って株式市場の空気は一変しており、業績や成長余地を厳しく見極める傾向が強まっているように感じます。

重要な指標の1つがアクティブユーザー数です。Facebookの日間アクティブユーザー数(DAU)が全世界で19億3000万人から19億2900万人へ100万人の減少に転じたことも、ネガティブな要因となっています。

Facebookのアクティブユーザー数が減少(Metaの決算資料より)
Facebookのアクティブユーザー数が減少(Metaの決算資料より)

すでに北米や欧州でのFacebookユーザー数はほぼ頭打ちで、多少減ることも珍しくはないのですが、アジア太平洋地域での伸びが鈍化し、その他の地域でも減少に転じています。もはやこの世界にFacebookの成長余地はないのではないか、との印象を受けるグラフです。

今後の売上予想については、外部要因も影響しているようです。Facebookはユーザーを追跡できることを強みとしていましたが、iOSのプライバシー仕様の変更で多くのユーザーが追跡の「拒否」を選んでおり、広告モデルの再構築を迫られています。

コロナ禍による世界経済の混乱も要因に挙げています。Metaの売上は広告が約97%を占めているものの、広告主のビジネスが苦しくなれば真っ先にカットされるのは広告予算です。最近ではさまざまなコスト増やサプライチェーンの混乱が広告需要を引き下げているようです。

加えて、強力なライバルとして台頭してきたのがTikTokです。ユーザーがSNSを楽しむ時間は有限であり、TikTokが伸びれば他のSNSや動画サービスが利用時間を削られる構図になっています。この点についてMetaは、Instagramのリール(ショート動画)で対抗していく構えです。

「メタバース」収益化はいつ?

今回はMetaに社名を変更してから初めての四半期決算でもあります。気になるのは「メタ」の部分ですが、事前に予告していた通り、AR/VR事業(Reality Labs)の数字が部門として独立し、収支を把握できるようになりました。

たとえば2021年の1年間では、Facebookなどのアプリからの収益が569億4600万ドル(約6.5兆円)に対して、Reality Labsは101億9300万ドル(約1.2兆円)の赤字となっています。今後もSNS広告で得た収益の一部を先行投資に回していくとみられます。

当面の売上としては、VRヘッドセットのようなハードウェア製品が考えられますが、本命はその先にあるメタバース上でのデジタルコンテンツや広告の販売でしょう。果たして事業の柱になるほどの収益化を実現できるのか、今後の決算ではこの部門の数字がどう変わっていくか、大きな注目ポイントになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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