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大雨特別警報とは:1都11県に「大雨特別警報」:台風19号の災害心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
大型台風19号 日本列島に接近(写真:ロイター/アフロ)

■1都6県に「大雨特別警報」東京は初めて〜さらに増えて1都11県に

気象庁は、台風19号による大雨によって「重大な災害が起きる恐れが著しく高まっている」として、東京、埼玉、神奈川、群馬、山梨、静岡、長野の1都6県に「警戒レベル5」にあたる大雨特別警報を発表した。東京に出されるのは初めて。ただちに命を守る行動を取ってください。

出典:日テレニュース24

栃木、茨城、新潟、福島、宮城にも大雨特別警報 1都11県に 台風19号

■特別警報とは

「平成23年台風第12号」では、何度も警報が出たものの、100人近い死者・行方不明者を出してしまいました。そのような反省から、2013年にできたのが「特別警報」です。特別警報は、これまでの警報(大雨警報など)以上の危険性を示しています。

特別警報には、大雨特別警報、噴火特別警報、津波特別警報など計9種類があります。想定しているのは「50年に1度」の大雨、大雪などで、超大型の台風や温帯低気圧が接近した時などに発表されます。

50年に一度ですから、ほとんど一生に一度の大雨です。「これまでに経験したことのない大雨」です。何十年と地元に住んでいる人でも経験がない大雨であり、何十年も氾濫していなかった川が氾濫するかもしれない大雨です。

数十年に一度の大雨とは言っても、日本中で見れば、数年に一度はあちらこちらで起きるでしょう。さらに言えば、近年雨の降り方が変わってきているとも言われ、各地で災害クラスの大雨が続いています。

そして、どんなに新しい制度や言葉が登場しても、私たちがしっかり聞いて、行動に移せなければ意味はありません。

私たちは避難指示と避難勧告の区別も混乱することがあります。様々な危険情報を理解する「リスク・リテラシー」が必要ですし、専門家と一般市民との間できちんとわかり合える「リスク・コミュニケーション」が必要です。

昨年の西日本豪雨では、残念ながら200人もの犠牲者が出ていました。専門家らは非常に危機感を持っていたのですが、市民にその思いは伝わりませんでした。

その反省から、各地で水害対策が進められましたし、情報の伝え方も工夫がされています。今回の台風19号では、どうでしょうか。今回も、専門家ほど危険性を感じているとも報道されています。

特別警報のイメージ(気象庁)
特別警報のイメージ(気象庁)

■危険から逃れるために

まず、リスク情報を積極的に集め、活用しましょう。特別警報がでたら、各市町村は住民に知らせる義務があります。でも、待っていれば良いわけではありません。こちらから、積極的に情報を集めましょう。

適切な行動をとるためには、「個人的選択」と「認知的複雑性」が必要です。

特別警報は、数十年に一度のことが起きようとしています。あなたにとって、初めての体験かもしれません。今まで通りの考え方、今までどおりの行動では不十分かもしれません。

ここは大丈夫とか、この川は大丈夫といった決まり切った考え方ではなく、いろいろなことが考えられる「認知的複雑性」をもった柔軟な発想が必要です。あらかじめ決められた避難場所へ行くという発想だけでなく、柔軟な発想が求められます。

恐怖心は大切です。ただ恐怖に震えるだけではなく、恐怖を活用して、安全を守る行動を起こしましょう。

「ネガティブな冒険者」として、危険な川や海を見に行くのではなく、「ポジティブな冒険者」として、自分とみんなの安全を守る行動をしましょう。

「特別警報」が発表されたら身を守るために最善を尽くしてくださいと、気象庁は述べています。では、どうすれば良いかですが、ケースバイケースです。

津波の危機なら、「津波てんでんこ」でしょう(指示を待たずに各自で高台に逃げる。誰かを探しに戻らない。目の前の人は助ける)。

様々な災害によっては、今すぐ避難所に行った方が良いのか、この状況なら外出せず2階に行った方が良いのか、個人の選択が求められます。増水や崖崩れなど、ピンポイントで避難指示が出せれば良いのですが、いつもそうはいきません。各自の判断が求められます。

不幸はいつも突然劇的に起きてしまいます。自然災害はやってきます。けれども人間の努力で被害を小さくすることはできるでしょう。

市内全域に避難勧告・避難指示!? どうすれば良いのか:心理的抵抗感の下げ方

避難勧告・指示は「避難所に行け」という意味ではない(台風19号に備えて)

 

 

(*この記事は、特別警報ができた2013年に発表した「特別警報開始とリスク認知:リスクリテラシー・リスクコミュニケーションを高める」(碓井)の記事を元に作成しました。)

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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