「文化庁芸術祭」で大賞&優秀賞に輝いた、2本の「土曜ドラマ」とは!?

『サギデカ』番組サイトより

令和元年度(第74回)「文化庁芸術祭」の受賞作が公表されました。

その「テレビ・ドラマ部門」で、木村文乃主演『サギデカ』が大賞を、そして高橋克実主演『デジタル・タトゥー』が優秀賞を受賞しました。どちらもNHK「土曜ドラマ」での放送でしたが、一体、どんな作品だったのか!?

詐欺の被害者と加害者、双方に迫った『サギデカ』

漫画や小説が原作のドラマもいいけど、たまには面白いオリジナル作品を見てみたい。

そんな思いの視聴者にピッタリだったのが、今年の8月から9月にかけて放送された、NHK土曜ドラマ『サギデカ』でした。

主人公は特殊詐欺捜査が専門の警部補、今宮夏蓮(木村文乃)。追っていたのは悪質な詐欺組織です。

主な被害者は高齢者たちで、家族がトラブルに巻き込まれたと言って欺く基本的なものから、「地面師(じめんし)」グループによる犯罪に巻き込まれたケースまで多様。しかも、展開される詐欺事件が、いずれも細部までリアルなものでした。

夏蓮は捜査の過程で、電話で相手をだます、優秀な「かけ子」だった加地颯人(高杉真宙)と出会います。

「自殺したくなるほど働かせて微々たる給料しか払わない、合法なだけでケチで冷たいブラック会社より、ウチのほうが社員思いで合理的」だと言い張る加地。

「やるんだったら本当にガメツイ年寄りをピンポイントで狙いなさいよ!」と怒りをあらわにする夏蓮。

2人が対峙(たいじ)する取調室の場面は、木村さんが主演女優としての存在感を示して圧巻でした。

実は夏蓮にも加地と同様、過酷な過去があることが分かってきます。加害者と被害者。犯罪者と警察官。単純な対立軸だけでは見えてこない、社会や人間の深層に迫ろうとするドラマだったのです。

脚本は前回の文化庁芸術祭大賞『透明なゆりかご』も手掛けた、安達奈緒子さんのオリジナル。

詐欺組織を率いる「番頭」(長塚圭史)や、その上に君臨する「首魁」(田中泯)との一筋縄ではいかない戦いには、じりじりするような緊迫感があり、見応えがありました。

ネット社会のダークサイドに斬り込んだ『デジタル・タトゥー』

『デジタル・タトゥー』番組サイトより
『デジタル・タトゥー』番組サイトより

今年の5月から6月にかけて放送された、NHK土曜ドラマ『デジタル・タトゥー』は、ネット社会のダークサイドに斬り込んだ意欲作でした。

タイトルは、ネット上に刻まれた「負の記録」が、入れ墨のように残り続けることで人を苦しめる現象を指します。

弁護士の河瀬季(かわせ とき)さんの著書『デジタル・タトゥー ── インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル』が原案で、脚本は浅野妙子さん。

主人公の岩井堅太郎(高橋克実)は元特捜検事で、現在は弁護士をしています。検事時代に大物政治家・伊藤秀光(伊武雅刀)の疑獄事件を担当し、秀光の長男を自殺に追い込んだという苦い過去があります。

そんな岩井の助けを求めてきたのが、人気ユーチューバーのタイガこと伊藤大輔(瀬戸康史)でした。

実は、タイガは伊藤秀光の次男。しかし、ネットでの炎上をきっかけに何者かに命を狙われる事態に陥ったのです。そんな2人が、ネットによる被害者を救済する活動を始めます。

たとえば、8年前に冤罪(えんざい)の痴漢事件で有罪となり、教師の職を追われた男が登場しました。彼は住む場所を変え、ようやく小さな塾を開いたのですが、過去の出来事を蒸し返す執拗(しつよう)な投稿のせいで、塾を閉めざるを得なくなります。

その痴漢事件の担当検事が自分だったこともあり、この案件を引き受ける岩井。調べてみると、投稿者は塾に息子を通わせていた母親(中越典子)でした。彼女には性犯罪者を恨む強い理由があり……。

岩井とタイガが向き合うのは、他者の人生を破壊する力を持つ、「匿名性」という名の凶器でした。しかも被害者になる可能性は誰にでもあるのです。異色コンビの戦いは、見ている側にも、他人事ではない恐怖を感じさせるに十分なものでした。

芸術祭大賞の『サギデカ』。そして優秀賞の『デジタル・タトゥー』。2本の「土曜ドラマ」に共通するのは、ヒリヒリするような「現代のリアル」だったのです。