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今年の夏、何より「キャラクター」が光ったCMとは!?

碓井広義メディア文化評論家
(ペイレスイメージズ/アフロ)

いつの時代にも、人気のCMキャラクターが存在します。この夏も、キラッと光ったCMの中に、永遠のレジェンドキャラクターと地上最強のキャラクターコラボがありました。

永遠のレジェンドキャラクター/ヤクルト「タフマン」

健康栄養ドリンク「タフマン」が発売されたのは、38年前の1980年のことです。

その5年後には、俳優・伊東四朗さんが起用されたCMが登場しました。以来30年以上、タフマンといえば伊東さんであり、ヒーロー「タフマン伊東」です。「♪あんたがたタフマン」のフレーズと童謡を借りたメロディも忘れられません。

新作CMの舞台は、ずばり「タフマンの世界」です。中央の玉座から立ち上がり、部下であるメイプル超合金の2人に向かって、「軽く(飲みに)行くか」と伊東さん。ところがヤングタフマンのカズレーザーさんは、「このあと用事あるんで」と、レジェンドのお誘いをあっさりかわします。かつて幅を利かせていた「飲みニケーション」も、いまや完全に死語ですね。

他にも、「マジで、ヤバイねえ」と電話で話すカズレーザーさんを、伊東さんが「私用の電話は控えろよ」とたしなめると、「いや、これクライアントっす」との返事。二重にあきれる伊東さんが、めちゃくちゃおかしい「電話篇」。

さらに、ヤングタフマンが何でも横文字にしちゃう「プライオリティ篇」などがあり、いずれも思わず絶句する伊東さんに同情したくなるほど、世代間ギャップが笑えます。

負けるな、元祖タフマン!

地上最強のキャラクターコラボ/カネボウ化粧品「コフレドール」

この風景、ニューヨークでしょうか。霧に包まれた夜明けの街を歩いてくる、足の長い美女は菜々緒さんです。

すると、そこにたたずむ、もう一人の美女がいます。おしゃれなドレスに真っ赤なリボン。なんと、あのキティちゃんじゃないですか。静かに見つめ合う2人。そしてラストのポージングも見事に決まっています。このCM、セリフは一切ありません。

ハワイ大学の民族文化研究者で、日系のクリスティン・ヤノ教授にお会いしたことがあります。

4年前の夏、ヤノ教授が『ロサンゼルス・タイムズ』紙の取材で語った、「スヌーピーは犬ですが、キティちゃんは猫ではありません。小さな女の子です」という発言は世界中を駆け巡り、膨大な数のキティ・ファンに衝撃を与えました。

また昨年には、ハローキティ研究の名著『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか? ~“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター~』(久美薫:訳、作品社)が、日本でも出版されました。

そんなヤノ教授によれば、キティちゃんこそ「ピンクのグローバリゼーション」であり、「キュート」「女性性」「セクシー」の3つを体現している、稀有なキャラクターなのだそうです。

菜々緒さんとキティちゃんの初共演。それは「キレイ」と「カワイイ」の出会いであり、ある意味で「地上最強のコラボ」なのでありました。

クリスティン・ヤノ教授と、ハワイ大学の研究室で(筆者撮影)
クリスティン・ヤノ教授と、ハワイ大学の研究室で(筆者撮影)
メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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