ジャーナリズム機能低下の報道

思えば、今年の放送界は波乱の幕開けだった。1月に籾井勝人氏がNHK会長に就任し、いきなり従軍慰安婦や特定秘密保護法について問題発言を連発したのだ。

特に「政府が右と言っているものを、われわれが左と言うわけにはいかない」という言葉は、権力を監視し批判を行うジャーナリズムの使命を完全に放棄する暴言だった。こうした人物がトップに居すわる以上、報道の現場に影響が出ないはずがない。

たとえば安倍政権が集団的自衛権の行使を閣議決定した7月1日夜の「ニュースウオッチ9」である。大越健介キャスターは「集団的自衛権というカードを持つことで、協力だけではなく日本への脅威を抑止するという性格が強まります」と利点を強調する形で伝えていた。これではまるで政府広報だ。この1年、その政策をきちんと批判しないことで結果的に政府をアシストする報道は、民放でもNHK以上に広がった。

続いてドラマ「明日、ママがいない」(日本テレビ系)の騒動が起きた。実在の児童養護施設から内容・表現に対する抗議があり、スポンサーがCMを自粛。放送中止の声も上がる異常事態となる。エンターテインメント性を優先するあまり、現実を物語に取り込む際に必須の配慮と丁寧さに欠けていたことに主な原因があった。また、この騒動によって、今後ドラマが扱うテーマや表現に、無意識の萎縮や見えざる自粛が生じる可能性を残したことも残念な事実だ。

ドラマを支えた女優たちの牽引力

とはいえ、今年のドラマには見るべきものも多かった。NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」は全話の平均世帯視聴率が22.6%で過去10年間の最高記録となった。朝ドラの王道である女性の成長物語に不倫スキャンダルなど通俗性を加味した展開が見事だった。それを体現したのは吉高由里子と仲間由紀恵だ。

この2人をはじめ、ドラマが女優たちの強い牽引力に支えられた1年だったと言える。「続・最後から二番目の恋」(フジテレビ系)の小泉今日子。「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(同)の上戸彩と吉瀬美智子。「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)の米倉涼子。そして「きょうは会社休みます。」(日本テレビ系)の綾瀬はるかも大健闘だ。

中でも永作博美と石田ゆり子の「さよなら私」(NHK)は今年のベストとも言えるドラマだった。高校時代からの親友同士が41歳になり、永作は専業主婦、石田は独身の映画プロデューサーだ。しかもふとしたきっかけで永作は夫(藤木直人)の浮気相手が石田であることを知る。言い争う2人だったが、突然互いの心(意識)が入れ替わってしまう。不安と戸惑いの中で過ごすうち、今度は永作ががんに侵されていることが分かる。

脚本は「続・最後から二番目の恋」も手掛けた岡田惠和だ。この年代の女性たちの微妙な心理を本音と建前も含めて丁寧に描いていた。また永作と石田も複雑な役柄を繊細な演技で表現し、大人が見るべき1本となった。