Yahoo!ニュース

ヤンキースは山本由伸にドジャースと同額の3億2500万ドルを申し出ることができなかったのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
山本由伸 MARCH 10, 2023(写真:CTK Photo/アフロ)

 ロサンゼルス・ドジャースは、山本由伸と12年3億2500万ドル(2024~35年)の契約を交わすようだ。ESPNのジェフ・パッサンやジ・アスレティックのケン・ローゼンタールらが、そう報じている。

 SNY(スポーツネット・ニューヨーク)のアンディ・マルティノらによると、ニューヨーク・メッツの提示額は3億2500万ドル、ニューヨーク・ヤンキースは3億ドルだったという。

 報道のとおりだとすると、山本の契約総額は、ゲリット・コール(ヤンキース)の9年3億2400万ドル(2020~28年)を上回り、投手では史上最高となる。

 投手の契約総額については、今月初旬にこちらで書いた。

「投手の契約総額ランキング。山本由伸のトップ10入りは間違いなし!? 最高額は9年3億2400万ドル」

 コールは、現在のヤンキースのエースだ。契約1年目の2020年――1チーム60試合の短縮シーズン――は、73.0イニングで防御率2.84。その後は、181.1イニングで防御率3.23、200.2イニングで防御率3.50、209.0イニングで防御率2.63を記録し、今シーズンは満場一致でサイ・ヤング賞に選ばれた。このスパンの計664.0イニングは、誰よりも多く、防御率3.08は、500イニング以上の34人中5位に位置する。

 山本に対し、ヤンキースは、コールを超える総額の契約を申し出るつもりはなかったのかもしれない。

 昨オフ、メッツは、FA市場に出ていたジャスティン・バーランダー(現ヒューストン・アストロズ)と2年8666万ドル6666ドル(2023~24年)の契約を交わした。当時、メッツにはマックス・シャーザー(現テキサス・レンジャーズ)がいた。シャーザーは、2021年のオフに、3年1億3000万ドル(2022~24年)の契約でメッツに入団した。バーランダーの契約は、シャーザーとバーランダーのどちらにも配慮したように見える。年数と総額は異なるものの、年平均額はともに4333万3333ドル。厳密に言えば、シャーザーは4333万3333.3333…ドルだが、限りなく同じに近い。

 シャーザーとバーランダーは、サイ・ヤング賞を3度ずつ受賞している。コールと違い、山本は、メジャーリーグで投げたことがない。

 もっとも、ヤンキースが3億2500万ドルの契約を提示しても、山本が入団していたかどうかはわからない。メッツが山本を手に入れられなかったことからすると、「東海岸」がネックとなった可能性もある。

 なお、コールと山本の契約を比べると、年平均額はコールのほうが高い。それぞれ、3600万ドルと2708万3333ドルだ。

 また、来オフ、コールは、契約を打ち切ることができる。ただ、コールがオプト・アウトしても、ヤンキースが契約10年目(2029年)の年俸3600万ドルを追加すれば、コールはFAにはならない。この場合、契約は10年3億6000万ドル(2020~29年)となり、山本の総額を上回る。USAトゥディのボブ・ナイテンゲールによると、今オフ、コールの代理人であるスコット・ボラスは「我々はそれが起きると予想している」と語ったという。ヤンキースがどう動くかはさておき、オプト・アウトするつもりでいる、ということだ。

 一方、山本は、ローゼンタールによると、契約6年目と8年目を終えた時点でオプト・アウトできるという。2029年のオフと2031年のオフだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事