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マリナーズは24歳の元プロスペクト外野手ら3人を放出し、開花前の投手2人を獲得する。この動きは!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャレッド・ケルニック Jul 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 12月3日、シアトル・マリナーズとアトランタ・ブレーブスは、2対3のトレードを成立させた。マリナーズが獲得したのは、右投手2人。ジャクソン・コワーコール・フィリップスだ。ブレーブスは、外野手のジャレッド・ケルニックと一塁手のエバン・ホワイト、先発左腕のマルコ・ゴンザレスに、金銭も手に入れた。

 27歳のコワーは、先月中旬にカンザスシティ・ロイヤルズからブレーブスへ移籍した。この1対1のトレードについては、こちらで書いた。

「昨年の最多勝投手を放出し、交換に通算39登板で防御率9点台の投手を獲得する。トレードは1対1」

 コワーの4シームは、100マイル近くに達することもある。とはいえ、制球にかなりの難があり、ブレイクには至っていない。メジャーリーグでは、3シーズンに74.0イニングを投げ、奪三振率9.12と与四球率6.20、防御率9.12を記録している。

 来年5月に21歳のフィリップスは、昨年のドラフト2巡目・全体57位だ。いくつかの記事によると、コワーより速い球を投げるようだが、昨春にトミー・ジョン手術を受け、プロ・デビューはしていない。

 一方、マリナーズが手放したケルニックは、2018年のドラフト全体6位だ。プロ入りから半年後に、エドウィン・ディアズロビンソン・カノーの交換要員の一人として、ニューヨーク・メッツからマリナーズへ移籍した。

 メジャーデビュー前は、フリオ・ロドリゲスとともに、マリナーズが迎える新時代の旗手になると期待されていた。ベースボール・アメリカは、2021年の開幕前に発表したプロスペクト・ランキングで、ロドリゲスとケルニックを、球界全体の3位と4位に挙げた。ロドリゲスと違い、ブレイクはしてはいないものの、まだ24歳だ。メジャーリーグ3年目の今シーズンは、開幕から21試合でホームランと二塁打を7本ずつ打ち、打率.343と出塁率.395を記録した。

 来年4月に28歳のホワイトは、メジャーデビューした2020年にゴールドグラブを受賞したが、打撃はさっぱり。2021年のシーズン序盤に腰を痛め、その後のメジャーリーグ出場はなし。マイナーリーグでも、ほとんどプレーしていない。来年2月に32歳のゴンザレスは、2018~22年の5シーズンに、先発131登板で防御率3.94を記録した。今シーズンは先発10登板で防御率5.22。左腕を痛め、復帰することなく、夏に手術を受けた。

 ホワイトは、来シーズンが6年2400万ドル(2020~25年)の契約5年目。ゴンザレスは、4年3000万ドル(2021~24年)の契約最終年だ。このトレードで金銭が動いたのは、彼らの残る契約のうち、マリナーズがいくらかを負担することを意味する。ちなみに、ホワイトの契約には、3年分の球団オプションがついている。ゴンザレスも、2025年は球団オプションだ。

 ホワイトとゴンザレスの2人はともかく、マリナーズがケルニックを手放したのは、もったいない気もする。見切りをつけたとすれば、少し早すぎるのではないだろうか。

 ブレーブスは、ケルニックとボーン・グリッソムにレフトのポジションを競わせると思われる。年明け早々に23歳となるグリッソムは、これまで、遊撃と二塁を主に守ってきた。メジャーリーグでもマイナーリーグでも、外野の守備についたことはない。ケルニックは左打者、グリッソムは右打者なので、併用することもできる。

 グリッソムの外野転向(とブレーブスの内野事情)については、こちらで書いた。

「前エンジェルスのベラスケスは、マイナーリーグ契約ながら開幕ロースター入りの可能性大」

 マリナーズでは、ライトを守っていたテオスカー・ヘルナンデスがFAになっている。ケルニックがいなくなり、外野は、ロドリゲスの左右がどちらも空いた格好だ。このトレードは、ここから外野手を手に入れる、ということなのかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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