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アストロズは今世紀初のワールドシリーズ連覇を逃したが、この選手は史上初「1人3連覇」の可能性あり

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウィル・スミス(テキサス・レンジャーズ)Oct 18, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 21世紀初のワールドシリーズ連覇は、今年も実現しなかった。昨年のワールドチャンピオン、ヒューストン・アストロズは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズでテキサス・レンジャーズに敗れ去った。

 ワールドシリーズを続けて制したのは、1998~2000年に3連覇のニューヨーク・ヤンキースが最後だ。2001年にヤンキースの連覇を阻んだのは、創設4年目のアリゾナ・ダイヤモンドバックスだった。

 ただ、今年のワールドシリーズでダイヤモンドバックスと対戦するレンジャーズには、過去2年ともワールドシリーズ優勝を味わった選手がいる。リリーバーのウィル・スミスがそうだ。

 2021年のワールドシリーズで、アトランタ・ブレーブスがアストロズに勝った4試合とも――シリーズはブレーブスの4勝2敗――最後の1イニングはスミスが締めくくった。

 翌年の夏、スミスは、先発投手のジェイク・オドリッジと交換に、ブレーブスからアストロズへ移った。スミスだけでなくオドリッジも、現在はレンジャーズに在籍している。ただ、オドリッジの登板は、レギュラーシーズンもポストシーズンもゼロだ。3月に肩を痛め、開幕直後に手術を受けた。

 昨年のポストシーズンで、スミスは投げていない。レギュラーシーズン最後の7登板中3登板で点を取られ、ディビジョン・シリーズとリーグ・チャンピオンシップ・シリーズのロースターには入らなかった。けれども、ワールドシリーズが始まる前にセス・マルティネスと入れ替わり、ロースターに加わったので、ワールドシリーズで投げていなくても、優勝メンバーに数えていいだろう。

 今年のポストシーズンは、ここまで3シリーズとも、ロースターに名を連ねている。ワイルドカード・シリーズが登板なし、ディビジョン・シリーズが1登板、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズは2登板だ。

 もっとも、状況は、前年と少し似ている。8月以降の失点増加により、スミスはクローザーから外され、その後も復調には至っていない。リーグ・チャンピオンシップ・シリーズでは、3点ビハインドと4点ビハインドの場面で登板し、どちらも、さらに点差を広げられた。第3戦はヨーダン・アルバレスにタイムリー・ヒット、第4戦はチャズ・マコーミックにホームランを打たれている。ワールドシリーズのロースターから外される可能性も皆無ではなく、ロースター入りしても、登板機会があるかどうかはわからない。

 スミスがロースターから外れる場合は、ブロック・バークマット・ブッシュが加わるのではないだろうか。この2人は、ワイルドカード・シリーズとディビジョン・シリーズのロースターに入っていたが、マックス・シャーザージョン・グレイの復帰に伴い、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズのロースターから外れた。バークは、スミスと同じ左投手だ。

 いずれも異なるチームで3年続けてワールドシリーズ優勝のメンバーとなった選手は、まだいない。スミスを含め、2年連続は、以下のとおり。

筆者作成
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 プレーしたチームという点からすると、スミスの前に、すべて違うチームで「1人3連覇」の可能性があったのは、ビル・スカウロンジョク・ピーダーソンの2人だ。スカウロンは、1964年の開幕をワシントン・セネタースで迎え、夏にシカゴ・ホワイトソックスへ移った。この年、ホワイトソックスは98勝を挙げたが、ヤンキースに1勝及ばなかった。なお、1978年のドン・ガレットと1993年のジャック・モリスは、前年と同じチームであるだけでなく、ワールドシリーズのロースターに入っていない。ライアン・テリオがプレーしたのは、2012年までだ。

 ちなみに、ドン・ベイラーは、1986~88年のワールドシリーズに、それぞれ、ボストン・レッドソックス、ミネソタ・ツインズ、オークランド・アスレティックスの選手として出場。この3チームのうち、ツインズはワールドシリーズを制した。エリック・ヒンスキーは、2007~09年のワールドシリーズに、レッドソックス、タンパベイ・レイズ、ヤンキースの選手として出場。こちらは、レッドソックスとヤンキースで、ワールドシリーズ優勝のメンバーとなっている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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