Yahoo!ニュース

ポストシーズンの試合で「1点ビハインドの9回に盗塁失敗」はこの選手とベーブ・ルースだけではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
コリー・シーガーとガナー・ヘンダーソン(右)Oct 7, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月7日、ガナー・ヘンダーソン(ボルティモア・オリオールズ)は、1点ビハインドの2対3で迎えた9回裏に、先頭打者としてヒットを打った。そして、二盗を試み、アウトになった。

 この試合は、ディビジョン・シリーズの第1戦だが、ベーブ・ルースの場合は、ワールドシリーズの第7戦だった。

 今から97年前、1926年のことだ。2対3の9回裏に、2死から四球で出塁したルースは、二盗を試みて刺され、その瞬間に、ニューヨーク・ヤンキースの敗退とセントルイス・カーディナルスの優勝が決まった。

 ポストシーズンの試合で、1点ビハインドの9回に盗塁失敗は、ルースとヘンダーソンだけではない。コーディファイ・ベースボールによると、1926年10月10日のルースが1人目、2023年10月7日のヘンダーソンは5人目。その間には、1982年10月13日のポール・モリター(ワールドシリーズ第2戦)、1990年10月4日のビリー・ベイツ(リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第1戦)、2013年10月4日のディー・ストレンジ-ゴードン(ディビジョン・シリーズ第2戦)がいるという。

 ベイツとストレンジ-ゴードンは、代走に起用された。ベイツは、二塁走者のエリック・デービスとともにダブル・スティール(重盗)を仕掛け、ベイツが二塁でアウトになった。

 5人のうち、盗塁失敗=試合終了はルースしかいないものの、あとの4人も、1点ビハインドのまま、試合は終わった。ヘンダーソンが走ったのは、試合後のヘンダーソンとブランドン・ハイド監督のコメントを報じた記事を読んでも、ハイド監督の指示だったのか、あるいはそうではなかったのか、判然としない。

 ちなみに、1990年のベイツは、シンシナティ・レッズでプレーしていた。この年のワールドシリーズで、レッズは、オークランド・アスレティックスをスウィープしている。ベイツのワールシリーズ出場は第2戦の1打席のみながら、10回裏にリリーバーのロブ・ディブルの代打として起用され、弱い当たりの内野安打で出塁すると、クリス・セイボのヒットで二塁へ進み、ジョー・オリバーのヒットでサヨナラのホームを踏んだ。

 当時、ベイツは、メジャーリーグ2年目だった。この年は、レギュラーシーズンの22試合で打率.088(34打数3安打)と出塁率.179、0本塁打と6盗塁。ワールドシリーズの代打が、メジャーリーグ最後の出場となった。

 ヘンダーソンは、メジャーリーグ2年目のルーキーだ。今シーズンは、150試合に出場し、打率.255(560打数143安打)と出塁率.325、28本塁打と10盗塁を記録した。新人王に選ばれる可能性もある。

 なお、ルースとモリターは、殿堂入りしている。ストレンジ-ゴードンは、首位打者と3度の盗塁王を獲得した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事