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エンジェルスが「贅沢税」を免れようとしているのは、大谷翔平を引き留めるためなのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・スタッシ(左)と大谷翔平 Aug 15, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロサンゼルス・エンジェルスは、ハンター・レンフローら6人をウェーバーにかけた――ランダール・グリチックを除く5人は他球団へ移籍した――のに続き、マックス・スタッシを制限リストに入れた。

 これらの動きは、定められた年俸総額を超えた分に課される、通称「ラグジュアリー・タックス(贅沢税)」の回避が目的だ。

 超過が2000万ドル未満なら、贅沢税はその20%となる。ただし、2年続けて超過すると、2年目の税率は30%に上がる。3年以上の連続超過は50%だ。エンジェルスは、今年の贅沢税を回避することで、来年の税率を20%にとどめようとしているように見える。

 今オフ、大谷翔平は、エンジェルスからFAになる。大谷と再契約を交わすには、大枚が必要になる。

 もっとも、大谷がエンジェルスに残るとは限らない。

 まず、FAになった直後に、エンジェルスは、大谷にクオリファイング・オファーを申し出る。大谷は、クオリファイング・オファーを断り、そこから、エンジェルスを含む各球団と交渉を行う。

 クオリファイング・オファーは、1年間の再契約だ。金額は、年俸上位125人の平均。今オフ(来シーズンの年俸)の金額も、昨オフ(今シーズンの年俸)の1965万ドルとそう変わらないだろう。

 大谷の今シーズンの年俸は、3000万ドルだ。新たな契約は、年平均4000万ドルを超えてもおかしくない。昨オフにニューヨーク・ヤンキースからFAとなったアーロン・ジャッジと同じく、大谷がクオリファイング・オファーを受け入れる可能性はゼロと言っていい。ジャッジは、ヤンキースからのクオリファイング・オファーを断り、他球団とも交渉を行った後、ヤンキースと年平均4000万ドルの9年契約を交わした。

 断られることがわかっているにもかかわらず、エンジェルスが大谷にクオリファイング・オファーを申し出るのは、大谷が他球団と契約した際に得られる補償、来年のドラフト指名権が理由だ。クオリファイング・オファーを申し出ていないと、補償は発生しない。

 クオリファイング・オファーを断った大谷が他球団へ去ると、エンジェルスは、2巡目と3巡目の間に指名権を一つ得る。けれども、贅沢税を課された場合、指名権は4巡目と5巡目の間になる。それぞれの順位は、全体65位前後と全体135位前後だ。この違いは、決して小さくない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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