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この投手は1年前にも「6イニング以上を投げてノーヒットのまま降板」。まだメジャーリーグ2年目

宇根夏樹ベースボール・ライター
ハンター・グリーン(シンシナティ・レッズ)May 26, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月26日、ハンター・グリーン(シンシナティ・レッズ)は、6イニングを投げ、被安打ゼロのまま、リリーフ投手と交代した。対戦したシカゴ・カブスの延べ20人中11人から三振を奪い、四球による2人しか出塁させなかった。投球数は110だ。

 ほぼ1年前、昨年5月15日の登板でも、グリーンは、7.1イニングを投げ、ノーヒッターを継続したまま、マウンドを降りている。この試合は、ピッツバーグ・パイレーツの延べ27人と対戦し、奪三振9と与四球5、投球数は118。降板時に残していった走者2人のうち、1人が生還し、1失点(自責点1)が記録された。

 グリーンは、23歳の右投手だ。2017年のドラフトで全体2位指名を受け、昨年4月にメジャーデビューした。オプタ・スタッツによると、1900年あるいは1901年以降の「モダン・エラ」において、メジャーリーグ最初の2シーズンに、6イニング以上を投げて被安打ゼロで降板が2度の先発投手は、1938年に2登板続けてノーヒッターを達成したジョニー・バンダ・ミーアに続き、グリーンが2人目――3度以上は皆無――だという。

 バンダ・ミーアは、1937年にデビューし、翌年6月の11日と15日にノーヒッターを成し遂げた。こちらは左投手だが、22歳の時にレッズからデビューという点は、グリーンと共通する。

 バンダ・ミーアは、殿堂には入っていない。ただ、兵役前の1941~43年は、いずれも防御率2点台。奪三振だけでなく、与四球も多く、3シーズンとも三桁に達したが、1941年の202奪三振と奪三振率8.03、1942年の186奪三振と奪三振率6.86、1943年の174奪三振と奪三振率5.42は、どれもナ・リーグ・トップだった。奪三振率の数値に関しては、高くない、あるいは低いと感じるかもしれないが、現代とは水準が異なる。

 グリーンは、昨シーズンが125.2イニングで奪三振率11.75と与四球率3.44、今シーズンは50.0イニングで奪三振率12.42と与四球率3.60。それぞれの防御率は、4.44と4.68だ。まだ、資質を完全に開花させてはいないものの、スタットキャストによると、球速100マイル以上は337球と85球を数え、両シーズンとも、先発投手のなかでは最も多い。

 なお、昨年5月15日も今年5月26日も、継投ノーヒッターにはなっていない。グリーンが手にしたのは、黒星と白星だ。もっとも、1年前の試合は、グリーンに加え、登板したレッズの他の投手も被安打はなかった。それについては、こちらで書いた。

「「被安打ゼロの敗戦」にノーヒッターとそうでないものがあるのはなぜ?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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