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昨年のドラフト全体13位が早くもメジャーデビューし、入れ替わりにフレッチャーが降格

宇根夏樹ベースボール・ライター
ザック・ネト(左)とロブ・マンフレッド Jul 17, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月15日、ロサンゼルス・エンジェルスは、クリス・ロドリゲスを15日間の故障者リストから60日間の故障者リストへ移し、デビッド・フレッチャーをAAAへ降格させた。それぞれ、40人ロースターと26人ロースター(アクティブ・ロースター)の枠を1つずつ空け、ザック・ネトをAAからメジャーリーグへ昇格させた。ネトは、アクティブ・ロースター入りの前提となる、40人ロースターにも入っていなかった。

 昨年6月のドラフトで、ネトは、エンジェルスから全体13位指名を受けた。現在の年齢は22歳。マイナーリーグの通算出場は、50試合に満たない。昨シーズンがA+の7試合とAAの30試合、今シーズンはAAの7試合。合わせて44試合だ。

 昇格当日、ネトは「8番・遊撃」として出場。昨年のドラフトで指名された選手のなかで、誰よりも早くメジャーデビューした。

 昨シーズンは、AAの30試合で打率.320と出塁率.382、4本塁打と4盗塁。今シーズンの7試合は、打率.444と出塁率.559、3本塁打と3盗塁だ。今春は、ノン・ロースター・インバイティ(キャンプ招待選手)としてメジャーリーグ・レベルのスプリング・トレーニングに参加し、16試合で打率.261、ホームランと盗塁はゼロながら、出塁率.393を記録している。

 とはいえ、他の選手が結果を残していれば、まだマイナーリーグにいたのではないだろうか。これまでは、ジオ・アーシェラ、フレッチャー、ルイス・レンヒーフォの3人が、遊撃を守ってきた。遊撃以外の出場も含め、アーシェラは打率.341と出塁率.370を記録しているが、フレッチャーはどちらも.125――長打率も同じ「トリプル.125」――で、レンヒーフォも.182と.308に過ぎない。ホームランは、3人合わせても、レンヒーフォの1本しかなかった。

 昇格させた以上、ネトにベンチを温めさせるとは考えにくい。4月15日の試合に、アーシェラは一塁手として出場した。これまで、一塁のポジションを分け合ってきたジェイク・ラムブランドン・ドゥルーリーも、打てていない。レンヒーフォは、二塁でドゥルーリーと併用されると思われる。

 レンヒーフォや他の選手ではなく、フレッチャーが降格となったのは、成績もさることながら、マイナーリーグ・オプションの有無が理由だろう。フレッチャーは、5年2600万ドルの契約3年目ながら、マイナーリーグ・オプションが残っているので、降格に際し、ウェーバー公示を経る必要がない。

【追記:4/19】

 フレッチャーは、サービス・タイムが3年以上なので、降格を拒否してFAになることもできた。だが、そうした場合は、サービス・タイムが5年未満なので、残る契約の金額を受け取ることはできなくなる。

 ちなみに、一昨年のドラフトで指名され、そのなかで最初にメジャーデビューしたのも、エンジェルスの選手だった。11巡目・全体321位のチェイス・ソーセスが、こちらもAAAでプレーすることなく、昨年5月13日の試合で先発マウンドに上がった。

 ソーセスは、6イニングを投げて得点を与えず、初登板を白星で飾ったが、その後の3登板はいずれも5イニングに届かず、AAへ戻された。2度目と3度目の昇格時も同様。結局、先発7登板で防御率6.59に終わった(AAの先発15登板は防御率2.28)。今シーズンは、AAAの先発3登板で防御率1.20を記録している。

 なお、ネトのメジャーデビューは、4打数0安打。アーシェラは、初回のグランドスラムを含め、5打点を挙げたが、エンジェルスは7対9で敗れた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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