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エンジェルスの売却中止は、決断が遅すぎた!? 大谷翔平は夏にトレードで移籍か

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平とアルトゥーロ・モレノ Sep 25, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 1月23日、ロサンゼルス・エンジェルスは、球団を売却しないことを発表した。アルトゥーロ・モレノとその家族が、今後もエンジェルスを所有する。モレノの声明には「この過程において、成し遂げていないビジネスがあることがはっきりし、我々は球団の将来とファンにポジティブなインパクトをもたらすことができると感じた」と記されている。

 声明によると、買収に強い興味を示したグループはあったという。もしかすると――そうであっても、モレノが明かすことはないだろうが――金額が折り合わなかったのかもしれない。

 今オフ、エンジェルスは、先発投手のタイラー・アンダーソン、リリーフ投手のカルロス・エステベス、内野手のブランドン・ドゥルーリー、外野手のハンター・レンフローらを加えている。ただ、十分な補強なのかどうかには疑問も残る。例えば、アンダーソンとドゥルーリーは、昨年のブレイクが持続しないかもしれない。エステベスは、ハードボーラーながら、昨年の防御率は3点台半ばだ。レンフローは、シーズン30本塁打以上を2度記録していて、昨年も30本まであと1本に迫ったが、出塁率は低い。

 エンジェルスがFA市場に出ていた選手と交わした契約の合計額は、7500万ドルに満たない。メジャーリーグ契約は4人、アンダーソンと3年3900万ドル、ドゥルーリーと2年1700万ドル、エステベスと2年1350万ドル、外野手のブランドン・フィリップスと1年120万ドルだ。

 球団を手放さないことにしたモレノが、ここから財布の紐を開いてもゆるめても、FA市場に大物は残っていない。

 エンジェルスのポストシーズン進出は、容易ではない。

 近年のア・リーグ西地区には、ヒューストン・アストロズが君臨している。過去6年のうち、地区優勝を逃したのは、短縮シーズンの2020年だけだ(地区2位に位置し、ポストシーズンには進出)。このスパンのリーグ優勝は4度を数え、2017年と2022年はワールドシリーズも制した。今オフ、ジャスティン・バーランダーはFAとなり、メッツに入団したが、今年も地区優勝の筆頭候補だろう。

 昨年、21年ぶりにポストシーズン進出を果たしたシアトル・マリナーズも、歓喜を1度で終わらせるつもりはない。新人王を受賞したフリオ・ロドリゲスを中心に、新時代を築いていこうとしている。

 さらに、テキサス・レンジャーズは、6年連続負け越し中ながら、ポストシーズン進出をめざし、大型補強を行ってきた。昨オフにコリー・シーガーマーカス・シミエンを手に入れ、併殺デュオを一新したのに続き、今オフは、ジェイコブ・デグロームネイサン・イオバルディアンドルー・ヒーニーらを加え、ローテーションを整備した。

 エンジェルスでは、このままいくと、シーズン終了後に大谷翔平がFAとなる。夏のトレードでエンジェルスが大谷を放出する、あるいは放出せざるを得なくなる可能性は、大いにありそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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