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この投手がオプト・アウトしないのは当然。ここ3年は計48.1イニング、残る契約は2年5500万ドル

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリス・セール(ボストン・レッドソックス)Jul 12, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、クリス・セール(ボストン・レッドソックス)は、オプト・アウトせずにオプト・インする。

 2019年の開幕直前に、セールとレッドソックスは、5年1億4500万ドル(2020~24年)の延長契約を交わした。この契約は、3年目が終わった2022年のオフに、セールのほうから打ち切り、FAになることができる。けれども、ボストン・グローブのアレックス・スパイアーによると、セールはFA市場には出ず、レッドソックスに残るという。

 当然の選択だろう。この契約がスタートした2020年以降、セールは48.1イニングしか投げていない。昨年のポストシーズンを含めても、57.1イニングだ。2020年の開幕前にトミー・ジョン手術を受け、復帰したのは翌年8月。さらに、今年は骨折が3度続いた。2月の疲労骨折(右肋骨)と7月の打球直撃(左手薬指)に、8月の自転車事故(右手首)だ。

 一方、契約は、年俸2750万ドルがあと2年、計5500万ドルが残っている。

 レッドソックスからすると、今のところ、この契約の「収支」は大幅なマイナスだ。ここから、セールが期待どおりの投球をしても、全体としてはプラスにならないかもしれない。ちなみに、契約時にレッドソックスの編成を司っていたデーブ・ドンブロウスキは、現在、フィラデルフィア・フィリーズにいる。

 ただ、セールは、2012~19年の8シーズンに1535.1イニングを投げ、奪三振率11.11と与四球率1.98、防御率3.05とFIP2.90を記録した。イニングは、このスパンの6位。800イニング以上の95投手中、奪三振率は3位、与四球率は11位、防御率は5位、FIPは4位に位置する。

 トレードにより、シカゴ・ホワイトソックスからレッドソックスへ移ってからの3シーズン(2017~19年)に限っても、519.2イニングで奪三振率13.21と与四球率1.97、防御率3.08とFIP2.57を記録している。こちらは、イニングこそ19位ながら、他は、300イニング以上の115人中、1位と8位、8位と1位だ。

 復活の可能性はある、と見ていいだろう。来シーズンの開幕とともに、セールは34歳となる。

 レッドソックスは、先発投手を必要としている。今シーズン、レッドソックスで20試合以上の先発マウンドに上がった投手は、4人いた。彼らのうち、ニック・ピベッタを除く3人、リッチ・ヒルマイケル・ワカネイサン・イオバルディは、今オフに揃ってFAとなる。

 なお、ドンブロウスキについては、こちらで書いた。

「彼が手腕を振るえば、あの球団も強くなるのか。リーグ優勝はフィリーズが4球団目」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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