なぜ「投手に不利なルール」ばかり導入されるのか。ピッチ・タイマー、守備シフトの制限、ベースの拡大
来シーズンから、ピッチ・タイマー(ピッチ・クロック)、守備シフトの制限、ベースの拡大など、新たなルールがいくつか導入される。いずれも、投手には不利となるルールのように思える。
少なくない投手は、ピッチ・タイマーの制限時間内に投げるため、これまでのルーティンやリズムを変える必要に迫られる。打者にも制限はかかるが、影響は投手のほうが大きいはずだ。
守備シフトが制限されることで、アウトになる打球は減りかねない。
ベースが大きくなると、塁間は短くなり、バッテリーは盗塁を阻止しにくくなる。牽制球の回数制限も、同様だ。
ピッチ・タイマーは試合時間を短縮し、ベースの拡大は怪我の防止という効果が見込める。後者の場合、打ってから走ってきた打者に一塁手が足を踏まれる危険は減る。けれども、投手に不利なルールばかりが導入されるのは、コミッショナーのロブ・マンフレッドの意向が感じられる。コミッショナーは、投手戦よりも打撃戦を好んでいる、あるいは、得点の多い試合のほうが人気を博して収益につながる、と考えているのではないだろうか。
投打のバランスを是正するため、という見方もできよう。例えば、今シーズンの1試合平均4.32得点(1チーム)は、2016年以降の7シーズンのなかで、最も少ない。2020年と2021年の1試合平均得点も、それぞれの前年と比べ、下がっている。今シーズンはまだ終わっていないが、3年続けて下降中ということだ。また、本塁打と犠牲フライを除く、フェアの打球がヒットになった割合を示すBABIPは.291。こちらは、1993年以降の30シーズン中、最も低い。2012年から2019年までは.296以上で推移していたが、ここ3シーズンは.292以下だ。
ただ、守備シフトは、ルールの変更によって生み出されたものではない。それを新たなルールで制限するのは、不自然ではないだろうか。また、これまでにもルールの変更は行われてきたが、投打の一方にマイナスをもたらすであろうルールが、同時にこれほど多く導入されたことは、なかった気がする。
選手会は、これらのルールに対し、導入するかどうかを決める委員会に名を連ねていた、選手全員が反対したと表明している。もっとも、この委員会のメンバーは、選手4人とMLB機構の6人、審判1人の計11人だ。MLB機構から反対する人物が出ない限り、選手たちと審判に関係なく、ルールの導入は決まっていた。