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大谷翔平をトレードで放出した場合、エンジェルスが得る見返りはどれくらいなのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)Jul 8, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 この夏、ロサンゼルス・エンジェルスが大谷翔平をトレードで放出すれば、かなり大きな見返りを得られるはずだ。

 もっとも、具体的にどれくらいの見返りになるのかは、予測が難しい。現代において、二刀流のスーパースターは、唯一無二の存在。当然ながら、トレードの前例もない。

 ベーブ・ルースがトレードで移籍したのは、今から100年以上も前のことだ。1919年の年末に、ボストン・レッドソックスは、10万ドルと交換に、ルースをニューヨーク・ヤンキースへ放出した。1919年のルースは、両リーグ1位の29本塁打と113打点(と出塁率.456とOPS1.114)に加え、133.1イニングを投げて防御率2.97を記録した。ヤンキースへ移ってから、ルースはほとんど登板せず、ホームランを量産した。

 大谷を放出した場合の見返りとして、何らかの参考になりそうなのは、昨年の夏にワシントン・ナショナルズとロサンゼルス・ドジャースが行った、ブロックバスター・トレードではないだろうか。ナショナルズは、トレイ・ターナーマックス・シャーザー(現ニューヨーク・メッツ)をドジャースへ放出し、その見返りとして、いずれも25歳以下の4人を獲得した。

 昨シーズン、ターナーは移籍するまでに、18本塁打と21盗塁、出塁率.369とOPS.890を記録した。シャーザーは、19登板で111.0イニングを投げ、奪三振率11.92と与四球率2.27、防御率2.76だ。今シーズン、大谷は打者として、19本塁打と10盗塁、出塁率.342とOPS.832を記録している。投手としては、14登板の81.0イニングで奪三振率12.33と与四球率2.22、防御率2.44だ。

 もちろん、違いは無数にある。例えば、ターナーは今オフにFAとなるので、トレードからFAまでの期間は現時点の大谷と同じだが、シャーザーは数ヵ月のレンタルだった。昨オフにFAとなり、メッツと契約を交わした。また、ターナーが遊撃手であるのに対し、大谷はDHだ。打者としてのタイプも異なる。だが、レギュラーの野手とエースのセットは、他の組み合わせの2人よりも、二刀流の大谷に近い。投打それぞれのスタッツも、それほどかけ離れてはいない。

 ナショナルズがドジャースから得た4人は、捕手のキーバート・ルイーズ、右投手のジョザイア・グレイヘラルド・カリーヨ、外野手のドノバン・ケーシーだ。昨シーズンの開幕前にベースボール・アメリカが発表したプロスペクト・トップ100で、ルイーズは53位、グレイは68位に挙げられていた。2人の他に、ドジャースからは、二塁手のマイケル・ブッシュが87位にランクイン。順位からすると――この順位を絶対視するわけではないが――ドジャースは保有していたプロスペクトのうち、トップ2を手放したことになる。

 ちなみに、このランキングのトップ3は、遊撃手のワンダー・フランコ(タンパベイ・レイズ)、捕手のアドリー・ラッチマン(ボルティモア・オリオールズ)、外野手のフリオ・ロドリゲス(シアトル・マリナーズ)。エンジェルスの選手では、ジョー・アデルブランドン・マーシュの外野手2人が、13位と38位に位置した。

 大谷の見返りも、人数は4人程度だろう。昨年1月に、クリーブランド・インディアンズが遊撃手と先発投手――フランシスコ・リンドーアカルロス・カラスコ――をメッツへ放出した時も、交換に得たのは4人だ。プロスペクト・ランキングのトップ10に入るような選手が含まれていれば、見返りの人数は減るだろうが、そこまでのトップ・プロスペクトを手放す球団は滅多にない。

 ただ、これらのトレードは、繰り返しになるが、あくまでも参考程度だ。大谷の放出は、実現すれば、さらにスケールの大きなトレードとなる可能性もある。大谷と他の選手をセットにした放出や、三角トレードも考えられる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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