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MLBの「投手転向」。今シーズンは2人がメジャーデビュー。それぞれ、外野手と内野手から投手に

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・クワス(カンザスシティ・ロイヤルズ)Jun 3, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、メジャーデビューを果たした投手は、昨オフに阪神タイガースから移籍したロベルト・スアレス(サンディエゴ・パドレス)を含め、すでに80人を超える。そのうちの2人、26歳のブランドン・ヒューズ(シカゴ・カブス)と27歳のホゼ・クワス(カンザスシティ・ロイヤルズ)は、数年前まで、マイナーリーグで野手としてプレーしていた。

 ヒューズは、外野手だった。2017年のドラフトで16巡目・全体495位指名を受けてプロ入りし、2019年から投手に転向した。その経緯と5月17日のメジャーデビューについては、「初登板の5アウトがすべて奪三振は、ほぼ史上初。記録した投手は3年前に外野手から転向」で書いた。5月28日に降格したものの、翌々日に再昇格。ここまで、メジャーリーグで10試合に登板し、13.0イニングで防御率2.77を記録している。投球は、90マイル台前半の4シームと、それより約10マイル遅いスライダーが大半を占める。

 先月末にデビューしたクワスは、内野のユーティリティだった。ドラフト順位は、2015年の11巡目・全体331位。ミルウォーキー・ブルワーズに入団した。2017年のオフに投手転向を決め、ブルワーズから解雇→独立リーグ→アリゾナ・ダイヤモンドバックス入団と解雇→独立リーグを経て、昨年6月にロイヤルズへ入団した。MLB.comのアン・ロジャースによると、その間にオーバーハンドからサイドスローとし、フェデックスで配達員として働いたこともあったという。ここまでは、8登板で7.1イニングを投げ、失点は1(防御率1.23)。90マイル台前半のシンカーに、こちらも約10マイル遅いスライダーを交える。

 野手から転向した現役投手は、ヒューズとクワスだけではない。マット・ブッシュ(テキサス・レンジャーズ)は、遊撃手だった。2004年のドラフトで全体1位指名を受け、そこから紆余曲折を経て、2016年にデビューした(「堕ちたトップピック・コンビ結成!? 出所したドラフト全体1位がレンジャーズに入団」)。

 ヒューズとクワスと同じく、ブッシュのデビューも転向後だが、アンソニー・ゴース(クリーブランド・ガーディアンズ)は、外野手として2012~16年にメジャーリーグでプレーした後、投手に転向し、昨年9月に再デビューした(「野手から投手に転向後、再びメジャーデビューして100マイル以上の速球を投げたのは史上初!?」)。転向前の出場は、372試合に上る。

 ワシントン・ナショナルズの2人、ジョーダン・ウィームスショーン・ドゥーリトルも、かつては野手だった。現役投手に限っても、他にもいるかもしれない。

 球史全体においては、野手から転向し、300セーブ以上を挙げた投手も、4人を数える。それについては、こちらで書いた。

「セーブ歴代トップ20の5人に1人は、野手から投手に転向。なかには、殿堂入りしたクローザーも」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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