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2人のスラッガー、トラウトとハーパーが浮き彫りにした、二刀流の難しさ

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(左)とマイク・トラウト Jun 7, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 前日に続き、6月9日の試合も、ロサンゼルス・エンジェルスのスターティング・ラインナップに、マイク・トラウトの名前はない。一昨日の試合中に、トラウトは左股関節の張りを訴え、ジョー・アデルと交代した。それについては、「13連敗より心配なのは、トラウトの怪我。ホームランと二塁打で不振脱出の直後に…」で書いた。

 トラウトは、故障者リストには入っていない。全力で走れなくても、バットを振ることはできるのかもしれない。現時点では無理だったとしても、100%の健康状態に戻る前に、そうなることはあり得る。

 今シーズンの開幕直後、ブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)は、右肘を痛めた。フィラデルフィア・エンクワイアラーのアレックス・コフィーによると、靱帯にわずかな損傷があるという。

 ハーパーは、PRP(多血小板血漿)療法を受けた。トラウトと同じ右投げの外野手なので、少なくとも1ヵ月前後は守備につけない。打球を捕っても、送球することができない。

 だが、その後も、ハーパーは試合に出場している。DHとしてだ。今シーズンから、ナ・リーグもDHを導入した。ハーパーに代わり、DHだったニック・カステヤノスがライトを守ることで、チーム全体の守備はマイナスになっているが、打撃に関しては、それまでと変わっていない。

 6月9日の試合を終えた時点で、ハーパーは、カイル・シュワーバーと並ぶチーム最多の15本塁打と、チーム・トップのOPS1.001を記録している。それぞれのリーグ順位は、3位タイと2位だ。フィリーズがエンジェルスをスウィープした6月3日~5日の3試合は、10打数4安打、8打点。ホームラン3本と二塁打1本を打った。

 他にも、離脱していた野手が、まずはDHとして復帰するケースは少なくない。

 一方、トラウトの場合、守れないが打つことはできる状態でも――ハーパーとは故障の箇所が違い、そうなるとは限らないが――エンジェルスのDHには大谷翔平がいる。トラウトがDHとして出場するには、打者・大谷をラインナップから外す必要がある。大谷に外野を守らせれば、2人をラインナップに並べることはできるが、大谷が先発投手の一人でもあることを考えると、エンジェルスがそうする可能性は低い。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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