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名前を変えた投手はそれぞれの名前で何勝したのか。金子千尋はここまで「千尋」で120勝、「弌大」で9勝

宇根夏樹ベースボール・ライター
金子千尋/ NOVEMBER 14, 2014(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 金子千尋(北海道日本ハム・ファイターズ)は、通算129勝を挙げている。オリックス・バファローズ時代の2006~18年に「金子千尋」として120勝と、北海道日本ハムへ移った2019年以降に「金子弌大」として9勝だ。2019年は8勝を挙げたが、2020年はリリーフに回ったこともあって1勝にとどまり、2021年は先発に復帰したものの、白星を挙げることはできなかった。今年は、在籍する球団こそ変わらないものの、登録名を「金子千尋」に戻し、マウンドに上がる。

 通算100勝以上のなかに、一軍デビュー後に登録名を変更した投手は、調べたところ、金子を含めて17人が見つかった。100勝以上は140人なので、8~9人に1人の割合、ということになる。

筆者作成
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 彼らのうち、通算303勝のビクトル・スタルヒン/須田博(233勝/70勝)は、戦時中に登録名の変更を余儀なくされた。通算115勝の大田垣喜夫/備前喜夫(56勝/59勝)と通算100勝の田中文雄/武智文雄(56勝/44勝)は、結婚によって苗字が変わった。他は、理由が判然としない投手もいるが、基本的には、心機一転や験担ぎによるものだ。

 シーズン中の変更も、1940年の「ビクトル・スタルヒン→須田博」だけではない。通算222勝の村山実/村山昌史(211勝/11勝)は、1963年のシーズン中に「実→昌史」と変えた。通算178勝の真田重蔵/真田重男(89勝/89勝)に至っては、1948年の「重蔵→重男」も1954年の「重男→重蔵」もシーズン中だ。

 スタルヒンは当然ながら、村山と真田も、登録名を一度変更した後、再び元の登録名に戻している。通算114勝の森中千香良/森中通晴(98勝/16勝)と通算113勝の河村久文/河村英文(98勝/15勝)もそうだ。金子も、今回の変更により、彼らと同じパターンとなる。現在の年齢は38歳だ。登録名を元に戻した5人のうち、その時点の最高齢だった森中の35歳を上回る。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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