Yahoo!ニュース

「規定投球回以上で5勝未満」に、昨年の田中将大より防御率が低い投手はいるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
田中将大 August 2, 2021(写真:ロイター/アフロ)

 昨年、田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス)は、パ・リーグ5位の防御率3.01を記録しながら、4勝9敗に終わった。規定投球回に到達したパ・リーグの14人中、6勝未満は田中だけ。セ・リーグの9人にも、6勝未満はいなかった。

 規定投球回に到達したシーズンに5勝未満は、田中が初めてではない。近いところでは、一昨年の田島大樹(オリックス・バファローズ)も4勝6敗だった。ただ、2020年の田島の防御率は4.05だ。2021年の田中と比べると、1点以上も高い。

 過去40年間(1982~2021年)に、規定投球回以上で5勝未満は、2020年の田島と2021年の田中を含め、15人を数える。そのなかで、2021年の田中よりも防御率が低かった投手は、2002年に防御率2.50で4勝9敗の金田政彦だけだ。奇しくも、2021年の田中と同じ勝敗の金田は、この年、最優秀防御率のタイトルを獲得した。防御率3.50未満は他に2人、1987年に防御率3.29で4勝6敗の河野博文と1996年に防御率3.44で4勝13敗の吉武真太郎がいるものの、彼らはどちらも、先発とリリーフがほぼ半々だった。2002年の金田と2021年の田中は、すべて先発登板だ。防御率の順位においても、リーグ・トップ5にランクインしたのは、2002年の金田と2021年の田中しかいない。

 また、この2人の在籍チームを比較すると、2002年のオリックス・ブルーウェーブが50勝87敗3分(勝率.365)と大きく負け越したのに対し、2021年の東北楽天は66勝62敗15分(勝率.516)と勝ち越した。1982年以降に規定投球回以上で5勝未満の15人中、在籍チームが勝ち越したのは3人。1987年の2人と、2021年の田中だ。防御率3.86で4勝11敗の小野和幸は、71勝45敗14分(勝率.612)の西武ライオンズで投げた。河野が在籍した日本ハム・ファイターズは、63勝60敗7分(勝率.512)だった。

筆者作成
筆者作成

 過去40年間において、規定投球回に達して防御率3.25未満を記録し、在籍チームは勝ち越しながら、5勝未満にとどまったのは、2021年の田中だけということになる。2002年のオリックスの場合、金田に次ぐリーグ2位の防御率2.52を記録した具臺晟も、5勝7敗に終わっている。同じチームの投手が防御率のリーグ・トップ2を占めながら、その白星は、合計しても二桁に届かなかった。一方、2021年の東北楽天では、田中に次ぐリーグ6位の防御率3.17を記録した則本昂大が、こちらは11勝5敗を記録している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事