Yahoo!ニュース

エンジェルスの先発投手陣は「復活を期す豪腕」と「先発復帰をめざす二刀流」を加え、まさかの補強完了!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイケル・ロレンゼン Aug 22, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロサンゼルス・エンジェルスが、マイケル・ロレンゼンと契約したようだ。ファンサイデッドのロバート・マリーが、1年700万ドル前後の契約で合意と報じている。

 ロレンゼンは、投手と外野手の二刀流選手だ。これまでは、シンシナティ・レッズにいた。メジャーリーグ1年目の2015年は主に先発として登板し、2年目からはリリーフに転向。そして、外野手としても出場してきた。

 もっとも、チームメイトになる大谷翔平とは、比べるべくもない。2015年は、救援登板を含め、113.1イニングで防御率5.40。リリーフとしては、2016~19年に4シーズン続けて50イニング以上を投げ、2017年以外は防御率3.15未満を記録しているが、外野手として先発出場は2019年の6試合しかない。今シーズンは、29.0イニングで防御率5.59。外野を守ったのは2.0イニング、打席に立ったのは1度だけ。三振を喫した。来年1月に30歳となる。

 シンシナティ・エンクワイアラーのボビー・ナイテンゲールによると、ロレンゼンは先発復帰を望んでいるという。2013年のドラフトで、ロレンゼンは全体38位指名を受けた。エンジェルスには、二刀流選手を起用してきた実績がある。もしかすると、うまくいくかもしれない。ついでに言えば、エンジェルスが本拠を構えるアナハイムは、ロレンゼンにとっては生まれ育った地元だ。

 ロレンゼンの前に、エンジェルスはノア・シンダーガードとも契約している。こちらは1年2100万ドル。シンダーガードは、大谷以上のハードボーラーだ。ただ、昨シーズンの開幕直前にトミー・ジョン手術を受け、今シーズンは2登板のみ。2022年は、復活を期すシーズンとなる。それについては「エンジェルスが手に入れた待望の先発投手は「ハイリスク・ハイリターン」。ハードボーラーではあるが…」で詳しく書いた。

 シンダーガードもロレンゼンも、来シーズン、期待外れに終わる可能性は、今シーズンあるいはここ数シーズンに結果を残してきた先発投手と比べると、低いとは言えない。

 まさか、この2人でローテーションの整備は終わりということはないだろうが、FA市場に出ている有力な先発投手の人数は、急速に減っている。ジャスティン・バーランダーアンソニー・デスクラファーニは、1年2500万ドルと3年3600万ドルの再契約を交わし、それぞれ、ヒューストン・アストロズとサンフランシスコ・ジャイアンツへ戻った。ケビン・ゴーズマンはトロント・ブルージェイズと5年1億1000万ドル、エデュアルド・ロドリゲスはデトロイト・タイガースと5年7700万ドル、ジョン・グレイはテキサス・レンジャーズと4年5600万ドル、スティーブン・マッツはセントルイス・カーディナルスと4年4400万ドル……といった具合だ。MLB.comのジョン・ポール・モロシによると、マックス・シャーザーも、3年1億2000万ドル以上の契約でニューヨーク・メッツと合意間近だという。

 サイ・ヤング賞を受賞したロビー・レイをはじめ、マーカス・ストローマンカルロス・ロドーンクレイトン・カーショウらは、まだFA市場に残っていて、ジョン・ミーンズ(ボルティモア・オリオールズ)やソニー・グレイ(レッズ)はトレードで獲得することが可能だろう。とはいえ、先発投手を欲しているのは、エンジェルスだけではない。しかも、エンジェルスからは、ライセル・イグレシアスがFAになったので、先発投手だけでなく、イグレシアスとの再契約を含め、クローザーも必要としている。

【追記:11/30】レイは、エンジェルスと同地区のシアトル・マリナーズと、契約の合意に達した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事