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エンジェルスでは10先発で防御率8点台の投手を、この球団はローテーションに迎え入れる。その意図は!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・キンターナ Apr 21, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ピッツバーグ・パイレーツは、サンフランシスコ・ジャイアンツからFAになったホゼ・キンターナを迎え入れるようだ。ファンサイデッドのロバート・マリーが、最初にツイート。その後、MLBネットワークのジョン・ヘイマンが1年契約と報じ、パイレーツのビート・ライター、ポスト-ガゼッタ・スポーツのジェイソン・マッケイは200万ドル前後の契約と伝えている。

 今シーズン、キンターナは、ロサンゼルス・エンジェルスで開幕を迎えた。左肩を痛めて5月末に故障者リストに入るまで、大谷翔平らとともにローテーションを形成し、9試合に先発した。6月下旬の復帰後は、救援14登板と先発1登板。8月下旬にウェーバー経由でジャイアンツへ移り、ブルペンから5試合に登板した。

 シーズン全体の防御率は6.43(63.0イニング)。先発時は8.23(35.0イニング)、救援時は4.18(28.0イニング)だ。6イニング以上を投げた試合はなく、5イニング以上ですら、わずか2試合だった。来年1月には、34歳の誕生日を迎える。

 それでも、パイレーツは、キンターナを先発マウンドに立たせるだろう。パイレーツの再建は、いつ完了するのか、まだ見通しが立っていない。来シーズンのポストシーズン進出は考えにくい。そのなかで、マイナーリーグから若い投手を昇格させ、FAとなるまでに保有できる期間を減らすよりは、安く手に入れたベテランを起用するほうがいい。

 2013年から2019年まで、キンターナは7年続けて170イニング以上を投げた。2013年は防御率3.51、2014~16年は3年続けて3.40未満を記録した。2017~19年の防御率は4点台で、2019年は4.68ながら、2017年と2018年は4.20未満だ。パイレーツとしては、3点台の防御率は無理かもしれないが、4点台前半なら可能と見ているのではないだろうか。今シーズンのパイレーツの先発防御率は、リーグ・ワーストの5.53。130イニング以上を投げた投手は一人もおらず、100イニング以上の4人中3人は防御率5.30以上だった。

 100イニング以上のあと1人は、18先発で防御率4.35のタイラー・アンダーソンだ。パイレーツは、7月下旬にアンダーソンをシアトル・マリナーズへ放出し、交換にマイナーリーガーの捕手と投手を1人ずつ手に入れた。キンターナも、キャリア・ワーストの防御率だった今シーズンから持ち直し、ローテーションを守り続ければ、夏にアンダーソンと同じ道をたどってもおかしくない。アンダーソンが今年2月にパイレーツと交わした契約は、1年250万ドルだった。

 キンターナが2016年までのような成績を残しても、パイレーツに勝利をもたらすことはできないかもしれない。だが、そうなれば、夏のトレード市場で今夏のアンダーソン以上の人気を博し、パイレーツはより大きな見返りを得ることができる。実績からすると、キンターナはアンダーソンを上回る。

 ちなみに、マリナーズへ移ってからのアンダーソンは、13先発で防御率4.81。マリナーズはあと一歩のところで2001年以来のポストシーズン進出を逃し、アンダーソンは再びFAになった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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