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バスター・ポージーは殿堂入りするのか。ジャイアンツの名捕手が34歳で引退

宇根夏樹ベースボール・ライター
バスター・ポージー(左)とマディソン・バムガーナー OCT 29, 2014(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 11月4日、バスター・ポージーは会見に臨み、前日に各メディアが報じていたとおり、引退を表明した。

 2019年は不振に終わったが、自ら選んだ昨シーズンの全休を経て、今シーズンは再び輝きを取り戻した。出場113試合中106試合でマスクをかぶり、打者としては、打率.304(395打数120安打)と出塁率.390、18本塁打、OPS.889を記録した。年齢は34歳。あと数年はプレーできたと思われる。

 サンフランシスコ・ジャイアンツ一筋に過ごし、12シーズンの通算成績は、打率.302(4970打数1500安打)と出塁率.372、158本塁打、OPS.831。オールスター・ゲーム選出は、今年の夏が3年ぶり7度目だった。2010年は新人王、2012年はMVPに選ばれ、2016年はゴールドグラブを手にした。

 現在、捕手のホール・オブ・フェイマー(殿堂選手)は19人いる。これは、ホール・オブ・フェイム(殿堂)がポジション別に分類した人数だ。そのうちの3人は、ニグロリーグのみでプレーした。残る16人のうち、ナ・リーグかア・リーグ、あるいは両リーグでプレーしたシーズンがポージーより少ない選手は、10シーズンのロイ・キャンパネラしかいない。キャンパネラと、13シーズンのミッキー・カクレイン以外は、いずれも16シーズン以上だ。キャンパネラは、その前にニグロリーグでプレーしているだけでなく、自動車事故により、選手としてのキャリアを打ち切られた。

 この16人の捕手と比べると、ポージーの12シーズンは、殿堂入りするにはやや短い気がする。ちなみに、セントルイス・カーディナルス一筋のヤディアー・モリーナは、今年が18シーズン目だった。こちらは、来シーズンを最後に引退することを宣言している。

 ただ、16人が記録した通算OPSをポージーのそれと比べると、11人はポージーの下に位置する。また、異なる年やスパン、リーグの選手を比較できるよう、各年のリーグ平均OPSとパーク・ファクターによって補正したOPS+の場合、ポージーの順位はさらに上がる。通算OPS+129は、バック・ユーイングとカクレインの2人と並び(厳密には違うが)、上にいるのは143のマイク・ピアッツァだけとなる。

 しかも、ポージーはディフェンスも優れていた。同じリーグにモリーナがいなければ、ゴールドグラブの受賞は1度にとどまらなかったはずだ。モリーナは、2008~15年と2018年にゴールドグラブを手にしている。

 投手のリードに関しては、数値で示すのは難しいが、ポストシーズンでポージーがマスクをかぶった時の完封は、14試合を数える。イライアス・スポーツ・ビューローによると、これは史上最多。それに次ぐ2人は、8試合のモリーナと7試合のヨギ・ベラだ。モリーナが捕手として出場したポストシーズンの試合はポージーの2倍近く、ベラもポージーより多い。

 ニューヨークからサンフランシスコへ移転後、ジャイアンツはワールドシリーズで3度優勝している。2010年と2012年と2014年だ(写真は2014年)。そのいずれも、チームの中心にはポージーがいた。

 こうしたことからすると、キャリアは短めながら、ポージーは殿堂入りするにふさわしく、実際にそうなるのではないかと思う。

 なお、引退の理由として、真っ先に挙げたのは、もっと家族とともに過ごしたいということだった。昨シーズンも、子供たちが新型コロナウイルスに感染するリスクを考慮し、ポージーは全休を選択した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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