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女性の命を救ったことのある審判が、この投手も救った!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケーシー・マイズ(デトロイト・タイガース)Jun 15, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月15日、ケーシー・マイズ(デトロイト・タイガース)は6.2イニングを投げ、3失点で4勝目を挙げた。メジャーリーグ1年目の昨シーズンは、7試合に先発し、0勝3敗、防御率6.99に終わった。それに対し、今シーズンの13先発は、4勝4敗、防御率3.49だ。3年前のドラフト全体1位が、資質を発揮しつつある。

 この試合も、マイズはそれまでと同じグラブをはめ、マウンドに上がった。けれども、2回裏からは、違うグラブを使用した。上の写真が前者、下の写真が後者だ。

ケーシー・マイズ(デトロイト・タイガース)Jun 15, 2021
ケーシー・マイズ(デトロイト・タイガース)Jun 15, 2021写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 マイズは試合後の会見で、その理由について、球審のジョン・タンペインに「色が明るすぎる」と言われたと明かした。マイズが借りたのは、カイル・ファンクハウザーのグラブだ。こちらもメジャーリーグ2年目。彼らは、マイナーリーグでもチームメイトとして過ごした。

 5回裏、ニッキー・ロペス(カンザスシティ・ロイヤルズ)が打ち返したボールは、マイズの顔に向かって飛んだ。マイズは顔の前にファンクハウザーのグラブを掲げ、それを捕球した。自身のグラブのままでも、捕ることはできたかもしれないが、マイズは「あのグラブが僕の命を救った」と語った。

 やや強引ながら、こういう見方もできなくはない。グラブを代えさせたのは、球審のタンペインだ。タンペインは4年前に、ピッツバーグの球場に行くためにロベルト・クレメンテ橋を渡っていた時に、そこから飛び降りようとしていた女性の身体を押さえ、彼女の命を救った。

ジョン・タンペイン Sep 1, 2020
ジョン・タンペイン Sep 1, 2020写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 なお、マイズにグラブを貸したファンクハウザーは、マイナーリーグでは先発投手として投げていたが、メジャーリーグでは1登板を除き、ブルペンからマウンドに上がっている。ただ、この試合の出場は「グラブ」のみ。本人は登板しなかった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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