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代走出場の二塁走者が、本塁から走ってきた捕手にタッチされてアウトになる

宇根夏樹ベースボール・ライター
トラビス・ジャンコウスキー(フィラデルフィア・フィリーズ)Jun 4, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月4日、二塁打を打ったリース・ホスキンス(フィラデルフィア・フィリーズ)は、そこでトラビス・ジャンコウスキーと交代した。1点ビハインドの9回裏、無死二塁。この走者が生還すれば、フィリーズは同点に追いつく。ホスキンスは、スピードのある選手ではない。一方、ジャンコウスキーは、2016年に30盗塁。2018年も、24盗塁を記録している。

 次の打者に対する投球がワンバウンドしたところで、大きめのリードを取っていたジャンコウスキーは、三塁へ走り出した。けれども、捕手のアレックス・アビーラ(ワシントン・ナショナルズ)がこのボールを好捕し、それを見て、ジャンコウスキーは立ち止まった。

 アビーラは二塁へ投げる動作を示しながら、そうはせず、右手にボールを持ち、自らジャンコウスキーに向かって走っていった。ジャンコウスキーは、戻ることも進むこともできない。どちらに行っても、送球されれば、その前に塁へたどり着くのは無理だ。前後に数歩行ったり来たりしただけで、ほとんど動けないまま、長髪をなびかせることもなく、迫ってきたアビーラにタッチされた。

アレックス・アビーラ(左)とジョシュ・ハリソン(右) Jun 4, 2021
アレックス・アビーラ(左)とジョシュ・ハリソン(右) Jun 4, 2021写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 無死二塁が1死走者なしに。そこから、フィリーズは2人続けてアウトになり、1対2で敗れた。

 ジャンコウスキーは、2月にフィリーズとマイナーリーグ契約を交わした。開幕ロースターには入れず、AAAで開幕を迎えた後、故障者に代わって5月30日に昇格し、メジャーリーグ7年目を迎えた。この日は、シーズン3試合目。その前の2試合はアウェーで出場しており、フィラデルフィアから車で1時間半のランカスターで生まれ育ったジャンコウスキーが、フィリーズの選手として地元でプレーするのは、この試合が初めてだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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