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「ケンタッキーダービーに行きたかったね?」と問われた三浦皇成の思わぬ答えとは?

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
東京ダービーを制したラムジェットと三浦皇成騎手。右端が前田幸治オーナー

1番人気に応え東京ダービー制覇

 6月5日、大井競馬場で東京ダービー(JpnⅠ)が行われ、圧倒的1番人気に支持されたラムジェット(牡3歳、栗東・佐々木晶三厩舎)が優勝した。

東京ダービーを勝った直後のラムジェット
東京ダービーを勝った直後のラムジェット


 今年からダート三冠レースが整備され、その2冠目となる東京ダービーはJRAの所属馬にも初めて門戸が開かれた。
 スタートが切られるとアンモシエラ(牝3歳、栗東・松永幹夫厩舎)が逃げ、サトノエピック(牡3歳、美浦・国枝栄厩舎)、ラムジェットといったいずれもJRA勢が先行する形。3〜4コーナーの勝負どころでは前を行く2頭が後続を突き放すかという態勢となった。

1周目のゴール前はいずれもJRA勢のアンモシエラ(7番)が逃げ、サトノエピック(10番)が2番手、ラムジェット(14番)が3番手で通過した
1周目のゴール前はいずれもJRA勢のアンモシエラ(7番)が逃げ、サトノエピック(10番)が2番手、ラムジェット(14番)が3番手で通過した

 しかし、直線に向いてエンジンのかかったラムジェットが一気に加速。先行勢をかわすと最後は2着のサトノエピックに6馬身の差をつけて圧勝してみせた。
 「とにかくおとなしくてなかなか競馬モードに入らないタイプで、飼い葉も、ペロリと食べるから心配になるけど、競馬に行くと強い走りをしてくれますね」
 管理する佐々木晶三調教師は満面の笑みでそう語った。

2着に6馬身の差をつけゴールするラムジェット
2着に6馬身の差をつけゴールするラムジェット

 2歳時は3戦して新馬戦の1勝のみだったが、3歳になってからはこれで3戦3勝。寒椿賞、ヒヤシンスS(リステッドR)、ユニコーンS(GⅢ)に続き、ついにJpnⅠをも勝利。いずれも目の覚めるような競馬ぶりだったが、この3連勝の全てで手綱を取ったのが三浦皇成だ。
 「勝負どころでモタつく感じになるのはいつもの事です。それでも1戦毎に扶助への反応は良くなっていて、今回も前に比べるとずっとマシになっています」
 初めての大井で初めてのナイター競馬。強いとは信じていても圧倒的な1番人気に支持されてのプレッシャーは大きかったようで、インタビューと表彰式が終わった後には「疲れたー」と大きい声で言い、伸びをするような仕種を見せた。

重圧を跳ね返し見事な手綱捌きでラムジェットを優勝へ導いた三浦皇成騎手
重圧を跳ね返し見事な手綱捌きでラムジェットを優勝へ導いた三浦皇成騎手


三浦皇成の思わぬ答え

 そんな三浦から「チャーチルダウンズ競馬場について教えてください」と連絡が入ったのは、今年2月の下旬。ケンタッキーダービー(アメリカ、GⅠ)への出走権を懸けたポイント対象レースとなるヒヤシンスSをラムジェットが勝った直後の事だった。

 結局、もっと多くのポイントを稼いだ馬で出走可能頭数を超えたためラムジェットの遠征は立ち消えてしまった。その後の豪快な連勝ぶりを見るにつけ、アメリカへ行けていたらどんな勝負が見られたか?!と考えてしまうのだが、そんな話を三浦にしたところ、次のような答えが返って来た。
 「もちろん行きたかった気持ちはあります。でも、行けなかったから、今があるのでは?と考えられるような好成績を、これから残して行きたいです」

大接戦となった今年のケンタッキーダービーのゴールシーン
大接戦となった今年のケンタッキーダービーのゴールシーン


 ダート三冠の最終関門となるジャパンダートクラシック(JpnⅠ)は10月2日、今回と同じ大井競馬場の2000メートルが舞台となる。ここにはケンタッキーダービーで僅差の3着に好走したフォーエバーヤング(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)も出走を予定している。佐々木は言う。
 「フォーエバーヤングとどのくらいの勝負が出来るのか、今から10月2日が楽しみです」

ケンタッキーダービーで、泥だらけになりながらも僅差の3着に好走したフォーエバーヤング
ケンタッキーダービーで、泥だらけになりながらも僅差の3着に好走したフォーエバーヤング


 来年はサウジアラビアやドバイへの遠征も目論んでいるようで、果たしてそこへ向かうまで、三浦皇成とのコンビでどこまで突き進むのか。新たなるダートのスターホースのこれからに注目したい。

ラムジェットと三浦皇成騎手
ラムジェットと三浦皇成騎手

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)



ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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