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臨時パスポートを取得し、息子のメジャーデビューに駆けつける

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケイド・ポービッチ(ボルティモア・オリオールズ)Jun 6, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月6日、ケイド・ポービッチ(ボルティモア・オリオールズ)は、両親が客席で見守るなか、先発投手としてメジャーデビューした。トロントのロジャース・センターで、菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)と投げ合った。

 だが、ポービッチの父は、そこに居合わせることができない可能性もあった。MLB.comのジェイク・リルによると、母はパスポートを持っていたが、父は持っておらず、臨時パスポートを取得し、アメリカからカナダに入国したという。

 ポービッチは、24歳の左投手だ。2021年のドラフトでミネソタ・ツインズに3巡目・全体98位指名を受け、翌年8月のトレードでツインズからオリオールズへ移籍した。直前のドラフト全体97位は、メイソン・ミラー(オークランド・アスレティックス)。トレードは、ホルヘ・ロペスの交換要員として、イェンニアー・カノーらとともに移籍した。ちなみに、ポービッチのメジャーデビューと同じ日に、ロペスはニューヨーク・メッツに解雇された。

 今シーズン、ポービッチは、AAAの先発11登板で56.2イニングを投げ、奪三振率11.91と与四球率3.34、防御率3.18を記録している。メジャーリーグ初登板は、ブラディミール・ゲレーロJr.にホームランを打たれるなど、5.1イニングで6失点(自責点6)。オリオールズは5対6で敗れ、ポービッチに黒星がついた。

 オリオールズには、ポービッチ以外に5人の先発投手がいるが、ポービッチは降格せず、次もメジャーリーグで投げるかもしれない。オリオールズは、5月31日~6月16日の17日間に17試合と、18日~30日の13日間に13試合を行う。

 パスポートと言えば、過去にはこんなこともあった。12年前の夏、ライアン・デンプスターは、シカゴ・カブスからテキサス・レンジャーズへ移籍した。その半月後、デンプスターは、ロジャース・センターで投げる予定だったが、パスポートを紛失していてカナダに入国できず、他の投手が登板した。

 この年、カブスとブルージェイズの試合は、組まれていなかった。デンプスターは、カナダで生まれ、カナダの高校に通い、そこからプロ入りした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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