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「トリプル・プレー」が多い、野手、打者、投手たち。名手? 鈍足? ゴロ系? 偶然の巡り合わせ?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ルーグネッド・オドーア(ニューヨーク・ヤンキース)May 21, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月21日、ニューヨーク・ヤンキースは、トリプル・プレー(三重殺)でピンチを切り抜けた。同点の9回表、無死一、二塁の場面だ。アンドルー・ボーン(シカゴ・ホワイトソックス)が打ったゴロをジオ・アーシェラが捕り、三塁を踏んで二塁へ送球した。それを受けたルーグネッド・オドーアルーク・ボイトへ転送し(写真)、イニングを終わらせた。

 守備側の野手としてオドーアがトリプル・プレーに関わるのは、これが2度目だ。1度目は、テキサス・レンジャーズ時代の2018年8月16日だった。

 オドーアとチームメイトのDJ・ラメイヒューは、コロラド・ロッキーズ時代に2度、こちらも二塁手としてトリプル・プレーに関わった。今シーズンは、二塁、一塁、三塁を守っている。控えではなく、レギュラーだ。ただ、この試合は、今シーズン初のDH出場。いつものように守備についていれば、3度目となっていたかもしれない。

 オドーアとラメイヒューを含め、守備側の野手としてトリプル・プレーに2度以上関わった現役選手は11人いる(この記事における「現役選手」は、30球団のいずれかに在籍しているか、現時点では在籍していなくても、今シーズンの試合に出場し、退団後に引退を表明していない選手を指す)。最多は、ホゼ・アブレイユ(ホワイトソックス)とジョナサン・スコープ(デトロイト・タイガース)の4度。アズドゥルバル・カブレラ(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)とミゲル・サノー(ミネソタ・ツインズ)は、2つのポジションで計3度を数える。アズドゥルバルの2度目は、アンアシステッド・トリプル・プレー(1人三重殺)だ。

筆者作成
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 11人中、ゴールドグラブを受賞したことがある――ゴールドグラブ=名手とは限らないが――のは、ロビンソン・カノー(ニューヨーク・メッツ)、ラメイヒュー、セイザー・ヘルナンデス(クリーブランド・インディアンズ)、ジョーイ・ボトー(シンシナティ・レッズ)の4人。トリプル・プレーのシーズンに受賞は、2010年のカノー(受賞2度の1度目)と2014年のラメイヒュー(受賞3度の1度目)だけだ。もっとも、このなかに、守備が苦手という選手は見当たらない。

 トリプル・プレーの打者に目を向けると、現役選手では3度のヤディアー・モリーナ(セントルイス・カーディナルス)が最も多く、他に2度以上はいない。スタットキャストによると、モリーナは打席から一塁へ到達するまでに平均4.80秒以上を要し、2015~20年の6シーズンとも、150打席以上のワースト25にランクインしている。打球がトリプル・プレーとなった3度のうち、最初の2015年5月9日はライナーだったが、続く2度はゴロ。3度目の昨年9月27日は、途中であきらめ、もともと速くないスピードをさらに落とした。

 また、現役投手で最多のザック・デイビーズ(シカゴ・カブス)とマーティン・ペレス(ボストン・レッドソックス)は、どちらも1シーズンに2度。ミルウォーキー・ブルワーズ時代の2016年と、ツインズ時代の2019年だ。2人とも、グラウンドボーラーという点は共通する。スタットキャストによると、2016年のデイビーズも2019年のペレスも、ゴロ率は47%を上回った(デイビーズの場合、2度目のトリプル・プレーはライナー)。また、2016年にデイビーズが記録したWHIP1.25は、規定投球回以上のナ・リーグ30人中20位。2019年のペレスはWHIP1.52で、ア・リーグ22人のワーストだった。ペレスの2度は、スコープの3度目と4度目とサノーの2度目と3度目に当たる。

 なお、モリーナの1度目については、こちらで書いた。

クレメンテに縁のあるウォーカーがやってのけたトリプル・プレーは、メジャーリーグ史上初の快挙

 ペレスの2度については、こちら。

1シーズンに2度、同じ投手が「トリプル・プレー」でピンチを脱出

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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