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無人タクシー/自動運転車 歩行者下敷きで6m引きずり...十数億円規模の和解金で決着

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
メディア向けに公開されたクルーズの自動運転車(2017年撮影)。(写真:ロイター/アフロ)

サンフランシスコで昨年、歩行者が完全無人タクシーに轢かれた事故を受け、米運営会社が十数億円規模の和解金を支払うとロサンゼルスタイムズが報じた。

人身事故が発生したのは昨年10月2日夜。ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の自動運転車部門、クルーズ(Cruise)の完全無人タクシー(自動運転車)が道路を走行中、左側を走行していた別の車が歩行者の女性をはねた。この衝撃で女性はクルーズの自動運転車の進路に投げ出されてそのまま轢かれ、下敷き状態になった。

クルーズの自動運転車は女性を下敷き状態で引きずったまま、時速7マイル(約11.26キロメートル)のスピードで約20フィート(約6メートル)走って停止した。

女性はこの事故で重傷を負い入院。その後治療を受け、退院したことが報じられた。

クルーズの走行イメージ写真。サンフランシスコ市内の本社近くを走行する様子(2018年9月撮影)。
クルーズの走行イメージ写真。サンフランシスコ市内の本社近くを走行する様子(2018年9月撮影)。写真:ロイター/アフロ

この度の報道では、事故から7ヵ月が経過し、クルーズが女性に対して800万ドルから1200万ドル(約12億5000円〜18億7000円相当)の和解金を支払うことに合意したという(いつ和解に達したか、また正確な和解金は不明と報じられた。また最初に女性をはねた車は現場から逃走している)。

クルーズは事故当初「自動運転車は衝撃を最小限に抑えるために積極的にブレーキをかけた」と発表していたが、後に車両のソフトウェアが女性に衝突した位置を記録する際にミスがあったと認めていた。自動運転車は事故後、路肩に寄せようと試みたが、それでも完全停止まで女性を下敷きにした状態で約6メートル走り続けた。

クルーズは事故後、カリフォルニア州陸運局によって自動運転タクシーの免許が停止となり、業務を約6ヵ月停止していた。4月に入り、アリゾナ州フェニックスで人間が運転する少数の車両で事業を再開することが伝えられていた

クルーズ社のウェブサイトにはこう書かれている。
「アメリカで昨年、自動車事故で亡くなった人数は4万3000人以上。当社は自動運転技術が人の命を救い道路をより安全にすると信じています」

アメリカは西海岸を中心に自動運転サービス(ロボタクシーとも呼ばれる)がトレンドだ。今春グーグル系列のWaymo(ウェイモ)がロボタクシーのサービス提供地域を拡大。テスラもロボタクシーを8月に発表する予定。

その一方でアマゾン系列のZoox(ズークス)が関与した2件の事故後、調査の対象になっていることも報じられている。このようなことから、対象地域の住民の間で、自動運転サービスの安全性に対する懸念が完全に拭いきれていないのもまた事実だ。

2022年12月9日、サンフランシスコで試乗中のWaymo(ウェイモ)のロボタクシー。
2022年12月9日、サンフランシスコで試乗中のWaymo(ウェイモ)のロボタクシー。写真:ロイター/アフロ

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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