Yahoo!ニュース

なぜ婚活パーティーに行っても、会場には「未婚のおじさん」しかいないのか?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

前回の記事(「若者が結婚離れしているのではない」そもそも結婚に前向きな若者は昔も今も5割程度)の続きである。

出生動向基本調査に基づく20-39歳の結婚に前向き意欲は、少なくとも1992年から男女ともほとんど変化はない。具体的には、男1992年43%、2021年44%、女1992年50%、2021年49%である。

しかし、20-39歳トータルでは約30年間変化はないのだが、詳細に年齢5歳階級別に見ていくと、違う側面が見えてくる。

1992年と2021年の「結婚前向き率」を年齢別の男女比率差分で比較したものが以下のグラフである。上に伸びているのが男が多い、下に伸びているのが女が多いということである。

まず、明らかな違いが一目瞭然なのは、1992年は30歳以上で結婚前向き率は男余りであったのに対し、2021年は45歳以上を除いてすべて女の方が多い女余りになっているということである。

念のため、2020年時点の国勢調査では、未婚の各年齢帯での未婚人口はどの年代も男の方が多い。にもかかわらず、2021年「結婚したい」という結婚前向き率は、女の方が割合としては20-44歳まですべて高い。

参照→未婚男性の「男余り430万人」の実態~もはや若者ではなくおじさん余りへ

夫年上婚の激減

1992年も20-29歳は女の方が多いではないか、と思うかもしれないが、当時はこれでバランスがとれていた。

なぜなら、人口動態調査より、1992年は、夫5歳以上年上婚(初婚)が13.4万組もあり、初婚全体の23%を占めていたからである。これは同い年婚の16%よりも断然多く、夫年上婚が多いことでマッチングが成立していた。

しかし、2022年における夫5歳以上年上婚は4.3万組にまで激減。なんと9万組も減った。

1歳以上の夫年上婚だけに拡大すると、その構成比は、1992年の68%から2022年には53%にまで減っている。年の差のある結婚だけではなく、近年全体的に夫年上婚が減少しているのだ。

実は、婚姻の減少数はほぼ夫年上婚の減少数と一致する。

これは過去記事においても紹介している。

参照→芸能人の年の差婚はいつも話題になるが、実際一般人の結婚の場合「何歳までの年の差」が限界?

婚活の現場に若い男はいない

このように、1992年は、結婚したい20代の女余りのように見えるが、その分夫年上婚のマッチングでうまく収まっていたわけである。その夫年上婚を後押ししたのは、当時の「結婚お膳立てシステム」である職場結婚であった。

そうした夫年上婚が大幅に減少している現代において何が起きるかというと、20代で大きく乖離している「結婚前向き率」の差が回収されず、30歳以降も「結婚したい女余り」となってしまうのである。

そのうち女性側も40歳近辺になると「もう結婚はいいや」と選択的非婚へと鞍替えする人も増え、結果中年になると「結婚したい男余り」になるのだ。

婚活の現場からよく聞こえてくる「婚活パーティーに行っても若い男子は全然いなくて、中年のおじさんばっかり」というのはこういうことからきている。

ならば、「結婚したい男」は20代から婚活を始めればよいという話もあるのだが、その20代未婚男性の前に立ちはだかるのが、早くに結婚・離婚をした若きバツあり男である。

彼らは、一度結婚を経験しているがゆえに女性との付き合い方もわかっているし、婚活女性にしてみれば、そちらの方がおどおどしている未婚男性より魅力的に見える。かくして、離婚男が初婚女と再婚する「時間差一夫多妻」が実現していく。

なぜか「結婚したい男」は数字の上では選べる側のはずなのに、現実では何度も選ばれる男が繰り返し持っていってしまうということになる。

参照→離婚再婚を繰り返す「時間差一夫多妻男」のカゲで生涯未婚の男たちが増えていく

結婚したい時に相手がいない

少子化は結婚した女性が子どもを産んでいない問題ではなく、婚姻減が大きな要因であることは繰り返し当連載でも書いてきた。第三子が産まれれば少子化解決などという有識者の主張は根本的に間違いである。

参照→「2人産んだ母親がもう一人子どもを産めば少子化は解決」などという説の嘘

そして、婚姻減とは、20代の婚姻が減少している問題であるが、これを「晩婚化」と判断するのも間違いである。

晩婚化しているというなら、かつて20代で結婚していた数が30代で補填されていなければならないが、実際の婚姻数では、20代の婚姻数の減少を穴埋めするほど30代の婚姻数は増えていないどころか、以前と同様で変わらない。

つまり、晩婚化しているのではなく、単純に20代での婚姻数だけが減っているだけで、「晩婚化ではなく20代の結婚が減った」に過ぎない。

20代の婚姻総数が減少している裏には、この30年間の若者の経済環境の酷さももちろんあるのだが、このような「結婚したいと思った時に相手がいない→女は20代で結婚したいのに、同年代の結婚前向きな男がいないし、男は30代になって結婚したいと思い始めても、もうおじさん扱いされ始める」というマッチング不全が起きているのである。

これこそが、不本意未婚が急激に増えている背景にある。

-

※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。

※記事の引用は歓迎しますが、筆者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。

※記事の内容を引用する場合は、引用のルールに則って適切な範囲内で行ってください。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

荒川和久の最近の記事