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大谷翔平に本塁打を打たれたものの、デビュー登板の投手が「8.2イニングのロング・リリーフ」で白星

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケント・エマニュエル(ヒューストン・アストロズ)Apr 24, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月24日、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)が、メジャーリーグで初めて守備についた。

 8回表が終わった時点で、スコアは2対13。エンジェルスは、ヒューストン・アストロズに11点差をつけられていた。8回裏は、レフトを守っていたアンソニー・ベンブームが登板し、大谷はDHを解除してレフトに入った。

 ロサンゼルス・タイムズのジャック・ハリスらによると、外野の守備は、大谷がジョー・マッドン監督に申し出たという。エンジェルスで出場していない野手は、マイク・トラウトしかいなかった。トラウトは2日前の試合で右肘に死球を受け、前日は欠場。この日も、スターティング・ラインナップから外れていた(2試合連続の欠場となった)。

 大谷の外野出場とベンブームの登板は、チームを救ったとも言えよう。だが、エンジェルスと対戦したアストロズには、彼らを上回る「救世主」が現れた。

 1回表、ジェイク・オドリッジは5球目を投げ、先頭打者をライト・フライに討ち取ったところで、右腕の違和感を訴えて降板した。代わって、前日に昇格した28歳の左投手、ケント・エマニュエルがマウンドに上がった。

 それまで、エマニュエルは、メジャーリーグで投げたことがなかった。けれども、思わぬ形で巡ってきた初登板で予想以上の働きをした。味方の手厚い援護があったとはいえ、「残り」の8.2イニングを投げきり、エンジェルスに許した得点は、アルバート・プーホルス大谷翔平のホームランによる2点だけ。シンカー、チェンジアップ、スライダーのコンビネーションが面白いように決まり、26アウトを記録するのに90球しか費やさなかった。

 先発とリリーフを問わず、今シーズンのアストロズには、1登板でエマニュエルよりも長いイニングを投げた投手はいない。また、ESPNスタッツ&インフォによると、リリーフとして8.2イニングは、1988年5月31日にニューヨーク・ヤンキースのニール・アレンが9.0イニングを投げて以来の長さ。デビュー登板に限ると、1974年9月3日にこちらも9.0イニングを投げた、サンフランシスコ・ジャイアンツのジョン・モンテフュスコ以来だという。アレンとモンテフュスコの場合、先発投手は1アウトも取れなかった。

 なお、エマニュエルの背番号は「0」だ。それについて、MLB.comのブライアン・マクタガートは、デビュー前日にこうツイートしている。「ケント・エマニュエルは、自身が出場停止を科されるべきだった試合数を表すため、ナンバーゼロのユニフォームを着るつもりだと言っている」

 昨年の夏、禁止薬物の陽性反応により、エマニュエルは80試合の出場停止処分を科されたが、「無罪」を主張してきた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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