シンス・チューが母国でプレーするのは、特別ルールの打ち切りが原因!?
今シーズン、シンス・チューは、メジャーリーグではなく韓国でプレーする。SPOTVのテウ・キムをはじめ、韓国のメディアが、SKワイバーンズと契約したと報じている(名前の表記は、ファーストネーム・ラストネームの順)。
チューにとって、韓国は母国だ。けれども、これまで、韓国プロ野球の球団に在籍したことはなかった。2000年のドラフトでロッテ・ジャイアンツから指名されたが、入団せずにシアトル・マリナーズと契約。2005年のメジャーデビューから昨シーズンまで、マリナーズ、クリーブランド・インディアンズ、シンシナティ・レッズ、テキサス・レンジャーズでプレーしてきた。
今シーズンも、昨シーズンと同じ「ユニバーサルDH」であれば、チューはメジャーリーグ17年目を迎えていたかもしれない。昨シーズンはナ・リーグもDH制を採用したが、今シーズンは従来のルールに戻り、ア・リーグのみとなる。
チューは外野手だが、守備は得意ではなく、近年はDH出場も増えていた。2017年以降の先発出場は、外野手として231試合、DHは224試合。それまでは、1096試合と73試合だった。チューのナ・リーグ時代は、2013年のレッズしかない。
チューと同じ38歳のエドウィン・エンカーナシオンは、まだFAのままだ。今月初旬に「本塁打王を「獲得していない」選手の通算本塁打ランキング/MLB編。同じ相手に2度阻まれた選手も…」で書いたとおり、エンカーナシオンは2012年から2019年まで8シーズン続けて30本以上のホームランを打ち(平均37.1本)、2020年は44試合で10本塁打を記録した。
アジアで生まれ、メジャーリーグでプレーした最高の野手として、チューの名前が真っ先に挙がることはないだろう。守備はもちろん、イチローの3089安打と509盗塁に対し、チューは1671安打と157盗塁だ。ただ、チューの218本塁打は、アジア生まれの最多。また、出塁率.377(7157打席)は、イチローの.355(1万734打席)のみならず、松井秀喜の.360(5066打席)も上回る。ちなみに、イチローの出塁率は、最初の10シーズン(2001~10年)に限っても.376だ。
2018年に、チューは52試合連続出塁を記録した。シーズン20本塁打&20盗塁以上の「20-20」は、チューが3度、イチローと松井はゼロだ。
チューのメジャーリーグ最後の打席――おそらく、そうなるだろう――は、印象に残るものだった。
9月上旬にホームへ滑り込んだ際に右手を痛め(写真上)、チューは故障者リストに入った。シーズン終了とともに7年1億3000万ドルの契約が満了し、球団が再建に向かうことからすると、チューがレンジャーズでプレーするのは、その試合が最後となる可能性もあった。
だが、最終戦に「1番・DH」として出場。バットを振ることができなかったチューは、シフトの逆を突いて三塁側にバントを転がし、懸命に走った。一塁ベースを踏むと同時に勢い余ってバランスを崩し、グラウンドに転がった。結果はセーフ。そこで、チューはウィリー・カルフーンと交代し、ダグアウトへ下がった。
チューについて、これまでに書いた記事はこちら。