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田中将大と再契約しなかったヤンキースが、首位打者に続いて呼び戻したのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブレット・ガードナー(ニューヨーク・ヤンキース)Sep 19, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ニューヨーク・ヤンキースは、今オフにFAとなって退団した選手のうち、昨シーズンは首位打者を獲得した(出塁率とOPSもリーグ・トップの数値を記録した)、二塁手のDJ・ラメイヒューと6年9000万ドルの再契約を交わした。一方、3人の先発投手は呼び戻さなかった。それぞれ、田中将大は東北楽天ゴールデンイーグルス、ジェームズ・パクストンはシアトル・マリナーズ、J.A.ハップはミネソタ・ツインズと契約した。田中とパクストンは、プロ入りからヤンキースに入団するまで在籍していた古巣へ戻った。

 2月半ばの時点で、ヤンキースが呼び戻した選手は、ラメイヒューしかいなかった。リリーフ投手のアダム・ウォーレンとも再契約を交わしたが、彼の場合、今オフにFAとなったわけではない。昨シーズンの開幕前にヤンキースから解雇され、その後はどの球団とも契約していなかった(2019年の秋にトミー・ジョン手術を受けた)。しかも、前回と同じく、今回もマイナーリーグ契約だ。

 ようやく、ラメイヒューに続く2人目が現れたのは、2月も下旬に入ろうとしてからだ。外野手のブレット・ガードナーが、今シーズンもヤンキースでプレーすることになった。MLB.comのマーク・フェインサンドらによると、契約は1年400万ドル。2022年は選手オプションだという。

 ガードナーは、ヤンキースの生え抜き選手だ。2005年のドラフトで3巡目・全体109位指名を受けて入団し、2008年6月にメジャーデビュー。以来、1548試合に出場してきた。ポストシーズンを含めると、出場試合は1600を超える。

 もっとも、ヤンキースの外野には、アーロン・ジャッジアーロン・ヒックスクリント・フレイジャーが揃い、マイク・トークマンもいる。DHのジャンカルロ・スタントンも、守備につくなら外野だ。さらに、今オフは、サンディエゴ・パドレスからグレッグ・アレンを獲得し、ジェイ・ブルースデレク・ディートリックとはマイナーリーグ契約を交わした。必ずしも、ガードナーが必要とは思えない。実際、昨シーズンの終了後、ヤンキースは、ガードナーの球団オプション、2021年の年俸1000万ドルを破棄した(解約金は250万ドル)。

 それでも、ヤンキースがガードナーを呼び戻した理由は、一言で表現するなら、リーダーシップだろう。また、現在の年齢は37歳ながら、選手としてもまだ終わってはいない。2019年は自己ベストの28本塁打とOPS.829を記録。2020年の出塁率は、短縮シーズンとはいえ、3年ぶりに.350を超えた。さらに言うなら、年齢を重ねても、ガードナーのブルーカラーなプレースタイルは、まったく変わっていない。

 ガードナーのプラークが、クーパースタウンの殿堂に飾られることはないだろうが、ヤンキー・スタジアムのモニュメント・パークなら、個人的にはありだと思う。ともあれ、それはまだ先の話だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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