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3年前に「200奪三振カルテット」を結成した4投手は、そして球団から誰もいなくなったが…

宇根夏樹ベースボール・ライター
カルロス・カラスコ Sep 20, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 先月初旬のブロックバスター・トレードにより、遊撃手のフランシスコ・リンドーアは、クリーブランド・インディアンズからニューヨーク・メッツへ移った。4選手と交換にインディアンズを去ったのは、リンドーアだけではない。先発投手のカルロス・カラスコも、ともにメッツへ移籍した。

 そして、3年前の2018年にメジャーリーグ史上初の「200奪三振カルテット」を結成した4投手は、インディアンズから誰もいなくなった。

 カルテットのなかで、最も早くインディアンズから移籍したのは、トレバー・バウアーだ。2019年の夏に、サンディエゴ・パドレスを含む三角トレードによって、シンシナティ・レッズへ移った。2020年のオフにFAとなったバウアーは、サイ・ヤング賞を受賞した後、3年1億200万ドルでロサンゼルス・ドジャースへ入団した。

 続いて、2019年のオフには、インディアンズで2014年と2017年にサイ・ヤング賞を手にしたコリー・クルーバーが、テキサス・レンジャーズへ放出された。レンジャーズでは1イニングしか投げられず、球団オプションだった2021年の年俸1400万ドルを破棄され、クルーバーはFAに。その後、ニューヨーク・ヤンキースと1年1100万ドルの契約を交わした。

 3人目のマイク・クレベンジャーは、昨年の夏、計9選手が動くトレードにより、パドレスへ移った。バウアーとクルーバーと違い、クレベンジャーはそこから移籍することなくパドレスにいるが、11月にトミー・ジョン手術を受け、今シーズンは全休する。

 夏と冬、夏と冬。トレードの「季節」がやってくるたびに、インディアンズはカルテットを1人ずつ手放していった。トレード・パートナーは、球団だけでなく地区もそれぞれ異なる。ナ・リーグ中地区(レッズ)、ア・リーグ西地区(レンジャーズ)、ナ・リーグ西地区(パドレス)、ナ・リーグ東地区(メッツ)だ。ちなみに、カラスコを獲得したメッツは、続いてバウアーとの契約にも乗り出したが、ドジャースにさらわれ、カルテット・メンバーの半分集結は実現しなかった。

 今シーズンのインディアンズのローテーションは、全員が26歳以下の若い顔ぶれになりそうな気配だ。昨シーズンのサイ・ヤング賞投手、シェーン・ビーバーの後ろに、ザック・プリーサックトリスタン・マッケンジーアーロン・シバーレの3人が並び、最後の1枠をカル・クオントリルローガン・アレンが争うのではないだろうか。ビーバーを除くと、いずれも実績は少なく、今シーズンがメジャーリーグ3年目か2年目――ビーバーも4年目――だが、ここまでの成績どおりの結果が残せれば、カルテットが全員いなくなったにしては、悪くないローテーションが形成される。

筆者作成
筆者作成

 この6人中4人は、インディアンズがドラフトで指名した生え抜きだが、クオントリルとアレンは、それぞれ、クレベンジャーとバウアーを放出した際に、見返りの一人として手に入れた。そこには、ローテーションそのものだけでなく、ローテーションを構成する投手も、トレードによってうまく回転させていこうという、資金が豊富ではない球団の意図が垣間見える気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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