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本塁打王を「獲得していない」選手の通算本塁打ランキング/MLB編。同じ相手に2度阻まれた選手も…

宇根夏樹ベースボール・ライター
アダム・ダン April 4, 2005(写真:ロイター/アフロ)

 本塁打王を獲得したことのある選手を除いた、通算本塁打トップ30には、1997年から2006年までの間に、シーズン本塁打の自己最多を記録した選手が18人いる。上位13人に限れば、その割合はさらに上がる。そうでないのは、4位のスタン・ミュージアル(475本)と7位のデーブ・ウィンフィールド(465本)だけだ。

筆者作成
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 20世紀の終盤から21世紀の初頭にかけては、球界にステロイドが蔓延していた。ステロイドを使用したのかどうか、使用したとしても効果があったのかどうかはともかく、当時は1シーズンに少なくとも50本前後のホームランを打たないと、まず、本塁打王にはなれなかった。1996~2007年の本塁打王は、延べ24人中23人が47本以上だった。また、シーズン55本塁打以上を記録した歴代の延べ19人中12人は、1997~2006年に集中している。

 このランキングの8位に位置するアダム・ダン(462本)も、ステロイド時代にプレーしている。2001年にデビューし、14シーズンをメジャーリーグで過ごした。ただ、ステロイドや他の禁止薬物の使用が取り沙汰されたことはなかった。トップ30にいる選手のうち、本塁打王と3本差以内のシーズンが2度あるのは、ダンと16位のビリー・ウィリアムズ(426本)、25位のノーム・キャッシュ(377本)の3人だ。ダンは、3本差以内のシーズンを両リーグで経験した。2004年の46本塁打は、トップと2本差のナ・リーグ2位タイ。2012年の41本塁打は、順位こそア・リーグ5位ながら、トップとの差は3本だった。

 ウィリアムズは、2度とも同じ選手に本塁打王を阻まれた、という見方もできる。1970年の42本塁打と1972年の37本塁打は、どちらもジョニー・ベンチと3本差(順位はナ・リーグ2位と3位)。ベンチの本塁打王は、キャリアを通してこの2度しかなく、ベンチもウィリアムズも、他に35本塁打以上のシーズンはなかった。

 キャッシュは、1965年の30本塁打が2本差で、1971年の32本塁打は1本差(ア・リーグ2位と2位タイ)。1971年の場合、ビル・メルトンが最後の2試合で計3本のホームランを打ち、キャッシュとレジー・ジャクソンを抜き去った。9月29日が終わった時点では、3人とも32本。キャッシュとレジーのチームはもう試合がなく、メルトンは翌日の2打席目にシーズン33本目のホームランを打った。

 なお、17位のエドウィン・エンカーナシオン(424本)は、まだ引退していない。1月に38歳の誕生日を迎え、現在はFAだが、500本塁打をめざしてあと2年はプレーしたいと考え、トレーニングを行っているという。今月初旬、MLBネットワークのジョン・モロシが、エンカーナシオンの代理人からそう聞いたとツイートした。あるいは、これから本塁打王を獲得し、このランキングから姿を消す可能性もなくはない。エンカーナシオンは、2012年から2019年まで8シーズン続けて30本以上のホームランを打ち(平均37.1本)、2020年は44試合で10本塁打を記録した。

 日本プロ野球編は、こちら。

本塁打王を「獲得していない」選手の通算本塁打ランキング。トップ3は500本以上、中田翔は29位

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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